みらいわブログ 2016年11月号

「配偶者控除の廃止」~103万円の壁の正体~

 初めまして、「みらいわ」メンバー税理士の兼田円です。
 さて、みらいわブログの記念すべき担当第1回目。
 今回採り上げたいテーマは、最近ホットなこちらです。
「配偶者控除の廃止」
 そもそも配偶者控除とは何か?を、「パート主婦の目線」からお話します。
「パート主婦の【給与収入】が年間103万円以下であれば【所得税法上】でご主人の控除対象配偶者となり、【ご主人の所得税】を計算する際に「配偶者控除38万円」が受けられる、という制度」
 そんなこととっくに知ってるよ~、と仰るなかれ。
上記の1文に、特に気をつけるべき項目が3つあります。【 】部分です。

【給与収入】について、お勤め先から支給される給与をいいます。例えば、「料理教室やネイルサロンを経営して得た収入」「ブログのアフィリエイト収入」等はこれに該当しないので注意が必要です。

【所得税法上】について、この年収103万円の壁は、あくまで「所得税法の控除対象配偶者に該当するかしないか」というボーダーラインです。言い換えると、年収103万円を超えても、社会保険上の「被扶養者」には該当することがあります。
 けれど実際には、ご主人の会社の福利厚生制度や健康保険組合によっては「所得税法上の配偶者控除の壁=社会保険の被扶養者の壁=103万円」と規定している会社もあるようです。
 さらに最近ショッキングな話を聞きました。
 「一昨年の私(パート主婦)の年収が、ボーナスを足したら103万円超えていたの。だから主人が申告して税金を納めたのだけど」
 はいはい、よく聞くお話ですね。
 「主人が会社でその話をしたら、一昨年の家族手当支給分24万円を一括返済してくれって経理から言われて」
 思わずエーっと言ってしまいました。
 税金や社会保険だけの話かと思っていたら、まさか家族手当ての取り消しになるなんて・・・と肩を落としていました。本来所得税上だけの壁である103万を、家族手当とも連動させている会社は少なくないようです。

【ご主人の所得税】についてよくある誤解、年収が103万円を1円でも超えたら、即控除が無くなり税金がどっと増える?
 いいえ、「配偶者特別控除」というクッション機能がありますので、103万円の壁を多少越えたとしても、所得税は大きな影響は受けないのです。この配偶者特別控除という制度のおかげで、年収141万円まではジワジワと税額が増えていきます。どこまで増えるかというと、計算上最低52,000円です(所得税+市県民税)。ただし、ご主人が高所得者であれば、増える税金は上記よりさらに多額になります。

 さて現状の結論として、パート収入の壁は、配偶者控除よりも「社会保険の被扶養者」や「家族手当」の壁を意識したほうが家計への影響を少なくできます。
 とはいえ。今政府が検討している案、「配偶者控除を廃止」となると、上記クッション機能も同時に廃止となる可能性が高く、家計のダメージはそれなりに大きなものになるでしょう。今後、私たち納税者はこの議論の経過をしっかり見ていく必要がありそうです。

 税理士 兼田円

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