みらいわブログ 2016年12月号

日本人は法律で守られているか

 租税法律主義という言葉があります。みなさんの財産に課税される相続税や贈与税、所得に対して課税される所得税や法人税は、国会で定められた法律ですね。
 では、実際の課税現場でその法律はどのように適用されるのでしょうか?
 実はその実際の法律の運用上最も尊重されているのは「通達」と言われるものです。私たち税理士も、トラブルを避けるために、通達に従って税務処理を行うケースがほとんどです。

 通達とは、各省庁の上級庁から下級庁へ事例ごとの取り扱いを指示したものに過ぎません。国民が遵守すべき法律として存在するものではないのです。
 しかし、税法は具体的事例が多岐にわたるため、様々な解釈上の違いが生まれます。そのために法の解釈をどのように行うべきかを、上級庁が指示を行なったのが「通達」と言われるものです。困ったことに、この通達が時代とともにどんどん変わっていく状況が日本には存在します。つまり、「相続が予想されるので、できるだけ税金を少なくしようと、様々な対策を立てておこう。」と頑張っていても、実際の相続が起こった時に「通達」が全く異なった規定になっていたということはよくあることなのです。

 例えば、大きな面積のある土地を、相続税の計算上どのように計算するかは、「相続税評価通達」によって算出するようになっていますが、その計算方法と手続きは、ここ10年の間でも様々変わってきました。これでは、計画的な相続の対策はできませんよね。
 税金を少なくするために、なりふり構わぬ節税対策を行うことが現実的かどうかはともかく、法の適用と解釈は一定であるべきだと思います。時代に合わぬ法律であれば、それを変更することが必要で、行政庁の判断で法の一貫性が保たれていないのは、先進国としてちょっと恥ずかしい部分だと思います。

 日本国憲法にも「全て国民は法の下に平等である」とうたわれていますが、このような通達行政だけでなく、日本はこと税に関しては、まだまだ改革すべきものがたくさんあるようです。

 税理士 半田 正樹

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