みらいわブログ 2020年3月号

みらいわブログ 2020年3月号

【財産を持っているひとが認知症になったら・・・】

私は日ごろ不動産の売買に関するお仕事をさせていただいております。その現場でお客さまから「え?自宅なのに売れないのですか???」と言われることが最近増えてきました。実はそうなのです。絶対に売れないということではないのですが、ご自身やご家族が思うタイミングでスムーズに売ることはできなくなります。財産を持っている人(不動産の所有者)が認知症などになり判断能力が低下している(もしくは判断できない)場合、その人の法律行為は認められないからです。(法律行為というとむずかしく聞こえると思いますが、要は「売ります」という意思表示は無効だということとです。) 一つの解決方法として後見制度を利用するという手段がありますが、手続きや費用の問題、裁判所がかかわってくることや時間の問題など、最善の方法とは言えない部分があります。
そこでご紹介したいのが「家族信託」です。家族信託をしておけば、財産を持っている人が認知症になっても自宅の売却をスムーズにおこなうことができます。

事例でご紹介いたします。
<ご相談内容>
●相談者:山田花子さん(78歳・女性)北九州市在住
●現 状:
・ご自宅でひとり暮らしをしている。(ご主人は約2年前に他界された)
・子どもさんはいらっしゃらない。
・法定相続人は、ご兄弟やご兄弟の子どもさんの複数人いらっしゃる。
・現在ある財産は、このご自宅が主で、現預金はあまりない。

●ご希望や叶えたいこと:
・可能なかぎり自宅で暮らしたい。
・ひとり暮らしに不安が出てきたら、どこか施設への入所を考える。
・入所する際そして入所してからの施設費用や生活費など、金銭面で親類に迷惑をかけたくない。
・入所する際に自宅を売却し、さまざまな費用に充てていきたい。
・しかし、その際に物事の判断能力が低下していて、自宅を売れない状況だと困る。

●課題や問題点など:
・手持ちの現金・預金が少ないため、施設に入所する際の費用が足りないであろう。
・もらっている年金も月13万円~14万円程度なので、施設に入所してからの施設費や生活費も不足する可能性が高い。
・費用捻出のために自宅を売却しようとした際の判断能力。
・自宅売却後、認知症などになった場合には預金口座が凍結される可能性が高い。

【対応手法の検討】
① 遺言書を書いておく⇒ そもそも遺言書は、亡くなられた後のための手法ですので、ご自宅の売却や費用の捻出には適さない。
② 成年後見制度を使う(任意後見制度もしくは法定後見制度)⇒ 先でも述べましたが、家庭裁判所が関わってくること、利用するための手続き、後見制度がはじまってからの費用の問題、スムーズな売却手続きとならず売却の好機を逃してしまう等あり、最善の方法とは言えない部分がある。

<家族信託を利用した場合>
家族信託は、ご自分が、任せたい人に財産の維持や管理、処分(売却)を任せることができます。元気なうちにおこなう契約です。財産すべてではなく任せたい財産だけ任せることができます。
ご自宅の売却は、任された人がスムーズにおこなうことができ、手続きをご自分の代わりにおこなってくれます。ご自宅の名義は任された人の名義に変わりますが、ご自宅を売却したお金は、ご自分のものですのでご安心ください。
その後、ご自宅を売却したお金は、任された人が、ご自分のために使ってもらうように決めておくことができます。そして、亡くなられた際に、もし残っているお金があった場合、あげたい人にあげることができますので、遺言書と同じような機能もあります。

家族信託をしておけば、上記のイメージ図のような流れとなります。財産の管理や処分(売却)を任された甥っ子さんが、スムーズにご自宅を売却することができます。今後の費用の問題、手続きの問題、時間の問題をクリアできると思います。
 
私たち『一般社団法人みらいわ』には、この家族信託をコーディネートする担当(お客様からのご相談やお悩みをお聞きし、解決策を考える担当)と、このコーディネートをもとに契約書として形にする家族信託専門士の両方が在籍しておりますので、ぜひ私たちにご相談ください。

加来不動産株式会社
家族信託コーディネーター 井料 隆彦

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