みらいわブログ 2022年6月号

「マンションが売れているそうですが…」

こんにちは。
先日、テレビのワイドショーを観ていたら、東京の中古マンション価格が高騰しているとの話題で盛り上っていました。細かい数字は忘れましたが(笑)、ある地区の中古マンションがこの10年程で2倍~3倍?になったそうで、コメンテーターが興奮気味に語っていました。
分譲マンションの価格は、建築費の高騰や地価の上昇で新築物件の販売価格が高止まりの傾向にあります。購入者にとっても依然として超低金利が続いており、マイホーム取得のための融資条件も比較的緩く高値でも購入しやすい環境にあると言われています。その一方で、新築物件の高騰による影響から、予算面で新築購入を断念した需要者層が中古物件に流れ、中古市場が過熱するという現象が起きています。なお、東京ほどではありませんが、この傾向は福岡県内の都市部でも見受けられます。
さて、マンションをお持ちの方には良さそうに聞こえますが、果たしてそうでしょうか?
マイホームではなく、投資物件をお持ちの方にとっては、メリットが大きいかもしれません(一説では、昨年秋より中古マンションの在庫が増えており、価格は下降局面に入ったと指摘する専門家もおられます)。一方で、同条件の物件に住み替えを検討している方にとっては、「高く売って」「高く買う」訳ですから、あまり意味はなさそうです。しかも不動産業者への仲介手数料や不動産売買に関する各種税金もかかります。ただし、家族構成の変化で現在の間取りが広すぎて、コンパクトな物件に住み替える場合などでしたら、良いタイミングかもしれません。
ところで、マンションを「終の棲家に」と考えるのは慎重さが求められます。新築後40年ほど経つと「建替え」を意識せざるを得なくなりますが、現実問題としてマンション内の所有者間の合意形成と建替え費用の捻出が困難なため断念することが多いと伺います。この点も、経年劣化や破損に対して修繕工事が適切に行われば建替えまでの期間を引き延ばすことは可能ですが、マンションオーナー(区分所有者)で構成する管理組合に十分な修繕積立金がプールされていることが前提です。一般論として分譲マンション業者は売りやすくするために当初の修繕積立金を低く設定する傾向にあり、通常はその後も「現状維持」が続きます。そして新築後10年近く経つと長期修繕計画に基づく第1回目の大規模修繕工事が検討され始めます。この時点でようやく「積立金不足」という現実に直面します。
 先ほどの「住み替え」の話に戻ると、買替え時の金銭的な損得だけでなく、買替えたマンション全体における過去の修繕履歴や修繕積立金の積立状況など、今後の支出面もあわせて把握しておくことが肝要かと思われます。

不動産鑑定士 沖永 裕章

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