みらいわブログ 2023年1月号

「幸福学」事始め(第1話)

 

新年明けましておめでとうございます。

今年も「みらいわ」をよろしくお願い申し上げます。

 

さて、皆さまは「幸福学」という言葉をお聞きになったことはございますか?

最近、私がとても注目している学問です。

 

一 幸福学とは?

 

幸福学とは 従来、幸せの研究は哲学者がやるものだとされてきました。ところが、最近、客観的かつ統計的に、科学として幸せを研究しようという機運が高まり、現在は、様々な分野からのアプローチが学問として体系化されようとしています。

幸福学とは、個人が自分の力でずっと続く幸せを感じる方法を見つける手助けをする学問です。

人が幸せを感じるメカニズムを解明できれば、より多くの人に幸せになるメカニズムを実践してもらえることになり、社会全体がもっと幸せになります。そのような画期的な学問です。

幸福になれるか否かは、実は生まれ育った境遇や運によるものだけでなく、ある意味スキルの問題だということです。

 

二 幸福の測り方

 

1 人生満足度尺度

 

人が求める幸福の内容は、もちろん個々人によって異なりますが、幸福学では「幸福感」や「幸福度」に焦点を当てて「幸福」を数値化していきます。

有名なものとして、アメリカのエド・ディナー博士の幸福度を図る「人生満足度尺度」というアンケートがあります。それは以下のようなものです。

 

【質問内容】

①ほとんどの面で私の人生は理想に近い。

②私の人生はとても素晴らしい状態だ。

③自分の人生に満足している。

④これまで自分の人生に求める大切なものを見てきた。

⑤もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう。

 

これらの5つの質問に対して、全く当てはまらない(1点)、ほとんど当てはまらない(2点)、あまり当てはまらない(3点)、どちらとも言えない(4点)、少し当てはまる(5点)、大体当てはまる(6点)、非常に当てはまる(7点)として採点して、人生満足度を比較する方法です。

 

2 国連の世界幸福度報告

世界幸福度報告とは、国連が設立した非営利団体「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年発表しているもので、150以上の国・地域に住む人々から社会的支援の充実度や人生の自由度などの自己評価値を集計し、各国・地域の「総合幸福度」「一人当たり国内総生産」「健康寿命」「社会的支援」「人生の選択自由度」「他者への寛容さ」「国への信頼度(腐敗を感じる程度)」を数値化していくものです。

2022年の報告では、総合幸福度ランキングの第1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位はアイスランドです。フィンランドは5年連続でトップです。ちなみに日本は54位とあまり高くはありません。

 

3 幸福学における幸福の測り方の特徴

幸福学の進展に伴って様々な調査アンケート内容が考案されていますが、個々人の望む幸福が人によって異なっていることを踏まえて、幸福を「人生満足度」や「幸福度」として汎用性のある内容として測定していることが特徴的です。

 

三  では、幸せな人の共通点とは何でしょうか?

 

アメリカ人のある学者が、幸福度の高い人たちを集めて研究し、彼らを幸せにしていものは何か、すなわち幸福を見つける鍵を突き止めようとしました。その結果、幸せな人たちの共通点は、以下のようなものだったそうです。

1 1つ目の共通点は「人との結びつき」であり、友人や家族などと良好な関係を築き、人との結びつきが強いということでした。

例えば、コンビニの店員と話をするという関係でも幸福感が増える。しかもそれは外交的な性格の人たちだけでなく、内向的な性格の人たちも幸福感が増すのだそうです。

2 2つ目の共通点は「親切」でした。

なので、人と交わるだけでなく、人を助けようとする社会的な行動をしてみることが幸福にとって大切なのだそうです。この観点から、例えばボランティア活動などは他者だけでなく自分も幸せにしてくれることが分かったそうです。

そして、この調査では「親切」と対をなす「感謝」するという気持ちが幸福と密接につながっていることも分かったそうです。

 

(実験)

あるグループには週に1日、10週間の間ごく普通の日記を書いてもらい、別のグループにはどんな小さな事でもいいので感謝の気持ちを綴る「感謝日記」をお願いしたところ、後者のグループは前者のグループよりも驚くほど幸福感が増した。

 

これらの実験で分かったことは、人に親切にし、感謝の気持ちとその時間を持つことが人を幸福にするということでした。だから私たちもそれを実践すると幸せになれるということです。

3 3つ目の共通点は、「内容に関係なく、目の前のことに集中する、今この瞬間に集中すること」だったそうです。

このような行動が幸福感を増すことにつながることが判明したのですが、それは科学的な根拠のあるストレス軽減方法として、世界中で広まっている瞑想やマインドフルネスとも関係する発見でした。私もマインドフルネスを実践していますが、以前よりもあまりストレスを感じなくなってきております。

 

四  幸福と遺伝子の関係と行動の重要性

 

実は、最近の研究では、遺伝的に他の人より幸せになりやすい人が存在することが分かってきているようです。

ところが、心配はいりません。そうでない人も幸福感につながる行動を意識的に取ることで幸福度が上がることも分かっています。

しかもそうやって得た幸福感は、職場での生産性が上昇するという効果だけでなく寿命にも影響することが分かってきているのです。

つまり幸福感は単に人の気分を良くするだけでなく、多くの恵みをもたらしてくれるということです。なので、「幸福学」を学ばないという選択肢はないと思う次第です。

 

五 お金と幸福の関係~お金は私たちを幸せにしてくれるのでしょうか?

 

1 高収入は幸福をもたらすのでしょうか?

 

結論的には、多くの調査結果をまとめると、お金持ちと貧しい人を比べてみても両者の幸福度に大きな差はないことが分かっているようです。

ある一定の収入(日本では700〜800万円)に達するまでは幸福度は高まるそうですが、それを超えると収入額による幸福度の高まりは頭打ちになるようです。年収が2倍になっても幸福度はたった9%しか上昇しないとの調査結果もありました。

 

2 お金の使い方と幸福の関係(その1)・・・経験や体験に使う

ところが、他方で「お金の使い方」次第で幸福度が増すことも分かっています。

少額でも構いません。何回そういう使い方をしたかという「頻度」が重要だとのことです。つまり、誰もが今の収入の範囲内でできるので、お金の使い方で誰もがより幸福になるということです。

 

(調査)

これまでの人生を振り返って、嬉しかったこと、感動したことは何かを答えてもらう調査をしたところ、物を買って感動した、うれしかったという回答はとても少なく、多くの人が体験や経験を挙げていることが分かった。

 

その原因は、物を買っても幸福感は一時的なものに過ぎず、時間が経てばそれに慣れてしまうので長くは持続しないし、その後に物が古くなってしまったり、自分よりも良い物を人が持っていることを羨ましがったりするなど、残念な出来事が待ちうけている場合が少なくないからだと考えられています。

 

ところが、多くの調査では、「物」ではなく「経験」を買う、つまり経験のためにお金を払う方がより幸福度を得やすいという結果が出ています。その理由は、記憶に残り、自分だけの個性を感じ、他人と社会的価値を共有するからだと言われています。

したがって、単に物を買う場合も、その物質的な機能よりも、それによってもたらされる「経験」に着目してそれを感じることが大切だということです。

 

3 では、どんな種類の経験にお金を使うと、より幸福度が高くなるのでしょうか?

この点については、科学的に証明されている「幸福度が高まる経験の4条件」というのがあるようです。それは・・・

 

① お金を使うことで、他の人との関わり、新たな知人や友人が増えたり、世の中とのつながりが実感できる経験。

② お金を使うことで、この先何年も楽しい気持ちで「繰り返し語ることができる」思い出となる経験。

③ お金を使うことで、自分自身で思っている理想とする自分のイメージ、あるいは「自分がなりたいと思っている自分像」につながる経験。

④ お金を使うことで、他の事とは簡単に比較することができない「めったにないチャンス」を得られる経験。

です。

 

そして、お金を使って得られる経験をしている際の「時間の長さ」は、幸福度にあまり関係ないそうで、短時間でも構わないようです。その理由は、経験をした後に(例えば、旅行から帰ってから)「思い出す」事でも幸福感が得られるからだと考えられています。

 

上記の4つの条件のうち1つ以上を満たす経験にお金を使うことは、今だけでなく、これから先、将来も幸せにしてくれるということですね。

 

4  お金の使い方と幸福の関係(その2)・・・他人のために使う

 

様々な調査や実験で、「他人のためにお金を使う」ことで人は幸福や喜びを感じることができることも分かっています。

 

(実験)

ある大学で学生達に現金を渡し今日中に使ってほしいと頼み、1つのグループには自分のために使うこと、もう1つのグループには人のために使うことと条件をつけた。すると自分のために使った学生よりも人のためにお金を使った学生の方が幸福度がはるかに高くなっていることが判明した。

 

このことは、豊かな国でも貧しいでも同じ結論だったようです。

また、他人のために使う「金額の大小」は幸福感にはさほど影響しないことも分かっています。それは与える喜びは人間の生まれ持った性質である可能性があるということを意味します。このことを示す以下のような実験があります。

 

(実験)

発達心理学者の協力で2歳未満の幼児を対象に実験を行った。幼児にクラッカーを与えて喜んでいる場合と、次にそのクラッカーをぬいぐるみに分けるように教えられて実行した場合とでは、前者よりも後者の方が幼児達が大きく喜んだという結果になった。

 

(調査)

20万人を対象としたある調査では、前の月にチャリティーに寄付した人々は、寄付しなかった人々に比べて、人生により多くの満足感を感じていることが判明し、さらに詳しく分析すると、家庭の所得が2倍になったのと同じぐらい幸福度が上昇することが判明した。

 

このように人を助けたり与えたりすることで喜びを感じるのは、人類が比較的小さな集団で進化し、互いに依存しあう必要があったからだと考える研究者が増えているそうです。

 

以上から明らかになった通り、お金と幸福との関係では、「稼いだお金で、どんな経験をするか?」「稼いだお金を、誰のために使うか?」が重要であり、この2つをお金を稼ぐ理由として設定し、その上で目標を立てれば人生幸福度がさらにアップするということです。

 

皆様も人生幸福度アップのために、実践されてみませんか?

 

5 最後は、人生満足度に影響を与えるお金と愛の考え方の話です。

 

幸せはお金をたくさん稼ぐことだけでは得られません。ある調査データによると、お金と愛のどちらを重要視しているかによって人生の満足度が変わってくることが明らかになったそうです。すなわち、「お金は重要だが愛はあまり重要ではない」と考えている人は人生満足度が低い。これに対して「愛はとても重要だけどお金は重要ではない」と思っている人たちは人生満足度がとても高いという結果になったそうです。

 

したがってお金を最優先にして「人生の目標」を設定すると、幸せが遠のいてしまう可能性が無きにしも非ずなので、少し注意をした方がよさそうですね。

 

 

《以上は、「『幸せ』について知っておきたい5つのこと~幸せとは技術である。習慣を変えるだけで人生は9割変わる。」(NHK「幸福学」白熱教室 中経出版)及び「99.9%は幸せの素人」(星渉、前野隆司共著 株式会社KADOMAWA)より。》

 

※来月に続く!

 

弁護士法人 翼・篠木法律事務所

代表弁護士 篠木 潔

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です