みらいわブログ 2023年2月号

「幸福学」事始め(第2話)

 

先月に続き、今月も「幸福学」の話をさせていただきます。

 

一 すぐに手に入ること、楽しみすぎることと幸福度の関係

 

多くの調査や実験で、いつでも手に入ると思うと、人は価値を感じなくなる、あるいは楽しみを与えすぎると感謝しなくなることという結果が出ており、このことが幸福度に影響を与えることが分かっています。

 

(調査)

あるグループには1週間チョコレートを禁止し、もう一つのグループには1週間好きなだけ食べなさいと伝えたところ、1週間後再びチョコレートを食べてもらった結果、うれしい・楽しいという感情は、後者のグループは減り、前者の方は上がっていた。

 

つまり私たちも、短期間でも好物を我慢すれば、楽しみを感じる能力が一新されるということです。

しかも嬉しいことに、これはほんの一瞬、間を開けるだけでも効果があるとのことです。

 

(研究)

最新の研究では、マッサージは休憩を挟んだ方が満足感が高いという結果が出ている。

 

したがって、幸せを大きくするためには、いつも身近にあるものを、時には使わずに、時にはご褒美として利用したり、好きなものならそれを控えめにして、とっておきのご褒美としたりして、楽しみを膨らませることが重要です。

私も毎日飲んでいたビールを1日おきに飲むことにました。すると、ビールがとてもありがたく感じられ、夜ごはんの晩酌時の幸福度が大きく上昇しましたよ。

 

二 仕事と幸せの関係~仕事の満足を高めていく方法とは?

 

1 「仕事の意義」を考えてみる

アメリカのエモンズという博士の研究によれば、有意義でエネルギーにあふれる人生には4つの要素があるそうです。

その4つの要素とは、「仕事」、「目先の利益を超えた理想」、「高い目的意識」、「社会とつながっているという実感」だいうことです。その中で博士が重視したのが「仕事」でした。

確かに、仕事は、ある面では、社会とのつながりを深め自己実現をするための手段なので、仕事をすることはまさに幸せにつながるためのものであると言ってよいでしょう。

この点、人はついつい目の前の仕事だけを意識しがちになるのですが、そうではなくて、仕事をするときにそれを俯瞰して、自分は何をやっているのかを見て、考えることが幸せのために非常に重要だとのことです。

 

例えば、レンガ職人の例で言えば、単に大聖堂を作っているのだと思うのか、さらにこの大聖堂を作ることによって人々を幸せにするんだと思って仕事をするかによって幸福度が変わるのだそうです。

 

2 仕事を自分の幸せに結びつける方法とは?

 

エール大学のエイミー・レズネスキー准教授による研究によれば、仕事は、人が仕事に対してどのような意識を持っているかによっての3つの分類に分けられるとのことです。それは「ジョブ」、「キャリア」、「コーリング」です。

 

① 「ジョブ」

仕事を単なる労働と位置づける考え方で、働く理由は報酬であり生活のためでもある。多くの人がこのような「ジョブ」として働いています。

しかし、もっと幸福度が増す働き方があるらしく、それが次の「キャリア」です。

② 「キャリア」

この働き方による働く動機は「経歴」や「向上している」という実感です。目の前の仕事をもっといいものに結びつけようとする。そのような意識で仕事をするともっと幸福度が上がるとのことです。

ところが、もっと幸福度が増す働き方があるようです。それが次の「コーリング」です。

③ 「コーリング」

これは、仕事をいわば「天職」と考え「社会の役に立っている」「自分の仕事には深い意味がある」という実感が働く動機になっている働き方です。

例えば病院の清掃員について考えると、単なる労働だと思って掃除をするのではなく、病院をきれいにすることで皆が健康でいられる手助けをしているという意識を持てば、コーリングになって、幸福度が増すというわけです。

 

もちろん、これらの仕事に対する3つの意識は固定したのではなく、状況によって変わっていくものとされていますが、この3つの考え方の中で最も幸福度が高いのが「コーリング」であることは、私たちが働く際のちょっとした意識の変化によって幸せな仕事の時間を得られるということでもありますので、とても貴重なスキルですよね。

皆様も少しだけ、以上のようなスキル(意識の変化)を用いて、仕事の面でも幸福度を上げてみませんか?

 

3 やりがいを見出す仕事の仕方とは?・・・ジョブ・クラフティング

 

上記の2とは異なる視点で仕事にやりがいを見出す方法があるようです。

 

①社会的な交流の質や量を見直す

仕事に関わる人との関係の性質を変えたり、範囲を広げたりしていく行動です。客や同僚などの人間関係を積極的に変えてその幅を広げていくと、より仕事の手ごたえを実感し、業務をスムーズに進行することができるそうです。

例えば、コンビニの店員が積極的に客と会話し、それを地域の人や地域そのものと結びつきを築く行為であると考えたりすること等です。

 

②仕事の意義を広げる

仕事や作業が社会や他者に貢献している意味を再構築すること、担当している仕事の目的を広い視野で見直すこと、もっと俯瞰的に大きな観点から意味を構築し直すことで、喜びの感じにくい仕事も有意義な仕事に思えるようになるそうです。

例えば、ある空港のシャトルバスの運転手が、自分が旅行業界の一員だと考えている、客が喜んでいる様子を想像して自分の仕事に意義を見出す等です。

 

③仕事の内容や範囲に手を加えてみる。

自分の仕事に対して、より価値を求めてやりがいが持てるよう内容を少し変化させる、仕事を楽しめるようアレンジしてみることも有意義だとのことです。

例えば、患者をケアする病棟の清掃員が病棟の壁にかけられていた2枚の絵を時々入れ替えるなど。

 

私も弁護士としての仕事に、このような方法(スキル)を取り入れて楽しく仕事をしたいものです。

 

4 幸福度と仕事の能力との関係

 

ある調査実験では、幸福度が高い社員は幸福度が低い社員に比べて、創造性が3倍高く、生産性は31%、売り上げは37%高いことが明らかになったようです。

これもとても興味深い結果ですね。

 

三 幸せを導く人間関係とはどんなものでしょうか?

 

1 人生満足度と年齢との関係

人は歳を重ねるうちに精神状態が安定し、人生満足度も上がっていくことが分かっているようです。ネガティブな感情も若い時より減少していくそうです。

だとすれば、年をとることもまんざら悪いものではなさそうですね。

 

2 温かな人間関係は幸福度を高める

 

(研究調査)

ハーバード大学が75年という長期にわたり「人の幸福度に影響与える要素」について研究した「ハーバードメンの研究」によると、幸福度が高いトップ10%の人々は、「温かな人間関係」を築くことができていたという事実が明らかになった。

トップ10の人々は、温かな人間関係を築くことができなかった人々と比較して、年収が高く、専門的な分野で成功を収めた人も3倍多かった。

 

幸福度や仕事での生活に最も影響を与える要因は何かというと、「温かな人間関係」を築くことができたかどうかだったようです。

 

また、「温かな人間関係」には「親と子」の関わりも含まれるとのことで、この研究では、幼年期に母親との温かな関係が築けていた人は、そうでない人に比べて年収が約870万円も高いという驚きの結果も明らかになったそうです。興味深い研究ですね。

 

① 温かな人間関係を築くために必要なことは何か?

それは「人を愛する能力」だとのことです。

この「人を愛する力」を強化する方法は「オキシトシン」というホルモンを増やすことだそうで、オキシトシンの脳内の分泌などが上がると、人を好きになる、人と仲良くしたくなる、人に共感する、人に親切になる、人付き合いでの不安が減少するそうです。

 

② オキシトシンを増やす方法

では、どうすればオキシトシンがたくさん分泌されるようになるでしょうか?

その方法は・・・

 

⑴ スキンシップ

人と直接触れ合うことでオキシトシンが分泌されるそうです。効果的なのは8秒間ハグをすること。動物とのスキンシップでもオキシトシンが分泌されるそうです。私は猫を飼っているのですが、確かに思い当たる節があります。

 

⑵ 心温まる映画を見る

人間の脳には「ミラーニューロン」という神経細胞があり、視覚から入り込んだ情報を自分の体験のように認識するそうで、それを利用する方法です。

 

⑶ 1日1善ではなく「週1に5善」を実行する

 

(研究)

カリフォルニア大学の研究で、毎日親切なことをするよりも、1週間のうち1日と決めて集中的に人に親切にした方が幸福度が高まることが分かっている。

 

これも面白い研究結果ですね。私もこれを真似してみます。

 

3 幸福を呼ぶ人と関わる些細な方法~実際に外に出て自分自身をより幸せにしましょう

 

自分が誰かにした親切を数えること。今日一日自分がした親切を書き留めたりつけること。ドアを押さえてあげるとか、コーヒーをいっぱいおごるとか、小さなことで構わない。こういう行動が幸福度を上げることに一役買うそうです。

皆さん、ささやかな無償の親切を実行してみましょう!

 

4 一人の人間の幸せは、周囲の人たちに伝染する力を持っている

 

(調査)

ハーバード大学の学者が5万人を対象に幸福が伝わるネットワークの有無について調査したところ、幸福度が高い人たちの近所に住む親族や知人は、その人と同様に幸福度が高いことが分かった。逆に幸福度が低い人の周りには同じように幸福度が低い人が集まっていることが分かった。

 

このことから分かるのは、いかに人や社会との結びつきが重要であるかという点です。幸福も不幸も伝染する。なので、どういう人と友達になるかは慎重になった方がいいですね。

 

(研究)

アメリカ・マサチューセッツ州の研究では、知人を介して自分がどれだけ幸福感を得ることができるかという調査で分かったことは、「親しい知人」が幸福だったとすると自分の幸福度はおよそ15%上昇する。「知人の知人」が幸せだった場合でも自分の幸福度は8%ほど上がることが判明した。

 

このことから、大事なのは人と付き合うことだということが分かります。そうすれば幸福な人とも出会うことができるからです。幸福な人は、お互い支えることも支えてもらうこともできます。皆さんがうまくいった時もいかない時も、そばにいてくれる人です。なので、仲間の幸福で皆さんも幸福になれるというわけです。

 

5 どんな人と結びつきが深いと、より多く幸福を感じられるのでしょうか?

 

(調査)

ある調査結果によれば、それは親友、家族、恋人だったそうです。

 

(調査)

日本の内閣府の調査によると幸福感を高めるのに有効な手立てとして最も多い答えは、家族との助け合い。次に友人。そして地域住民、職場の同僚という順番だったそうです。

 

(調査)

さらに別の調査によると人間関係の量が人を幸せにするのか、それとも質が影響するのかを調べたところ、量はそれほど関係がなく、人間関係、特に友人関係の多様性が幸福に影響することが分かったそうです。

(アメリカの例ですが)異なる職業、国籍、性別を持つ多様な友達を持っている人が幸せである傾向が高かった。それは友達の数と幸せの相関よりも強いことが分かったそうです。

 

(研究)

また別の研究によれば、自分の弱みを見せられる人や困ったときに頼れる親友が1人か2人いれば、それで充分幸福になれることが分かっています。

皆様にはそんな人はいますか?

 

また、物事がうまくいかないときに人からサポートを受ける事はもちろん幸福度を高めることにつながるが、実は大切なのは、物事がうまくいったときにそばにいてくれる、一緒に喜んでくれる人がいるかが重要だということのようです。

 

(調査)

恋愛に関する調査では、嬉しい出来事を恋人と共有し、成功を喜び合いたいと思った時に、相手が関心を示さなかったカップルは別れることが多いという結果が出たそうです。

私も気を付けたい点ですね。

 

四 最後に

 

幸福学は様々な観点から考察が進んでいます。

例えば、夫婦関係やパートナーとの関係をいかにして幸福に結びつけるか? 職場や組織における幸福学、居住空間と幸福度の関係、町づくりと幸福感、製品開発と幸福学、幸福感とホルモンの関係など様々です。

 

私の2回に渡る幸福学の話はほんの一例に過ぎません。このためタイトルも「『幸福学』事始め」といたしました。

 

そこで、皆様におかれましては、これを機会に「幸福学」を学ばれ、幸福度を高めるヒントやレシピを見つけて、幸福感を感じる将来の安心術として活用して下さい。

 

そして、ご自分や家族や周りの人たちの幸福感を高めるとともに、皆様のお仕事や日常の中で出会った困難のある方々を、少しでも幸福感を感じることがきるよう役立てていただければ幸いです。

 

《以上は、「『幸せ』について知っておきたい5つのこと~幸せとは技術である。習慣を変えるだけで人生は9割変わる。」(NHK「幸福学」白熱教室 中経出版)と「99.9%は幸せの素人」(星渉、前野隆司共著 株式会社KADOMAWA)より。》

 

弁護士法人 翼・篠木法律事務所

代表弁護士 篠木 潔

 

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