みらいわブログ 2023年9月号

「相続土地国庫帰属制度」

 

令和5年4月27日から『相続した土地を国が引き取る』という制度がスタートしました。

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいというニーズが高まっています。

 

このような土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。

 

私は不動産会社に勤務していますので「自分たちには必要がない不動産がある」「こういった不動産を手放す方法はありませんか?」とご相談をいただくことがあります。こういった場合に、この制度を検討するのもひとつだと思います。

 

ただし、不要という不動産すべてを国に帰属させる(国に引き取ってもらう)ことができるわけではありません。

 

下記のような不動産は申請の対象外とされています。

 

■ 建物がある土地

■ 担保権や使用収益権が設定されている土地

■ 他人の利用が予定されている土地

■ 土壌汚染されている土地

■ 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

 

また、申請が受理されても、審査の結果、承認を受けることができないケースもあります。

 

■ 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

■ 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

■ 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

■ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

■ その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 

このような土地は承認を受けられないとされています。

 

そして、費用についてですが、審査手数料が土地一筆当たり14,000円です。(申請時に必要)。

手数料の納付後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認となった場合でも、手数料の返還はないようです。

また、実際に承認を受けた場合には、10年分の土地管理費用相当額の負担金の納入が必要になります。この金額については、土地の地目や面積に応じて算定されるようです。

 

この制度の申請は、法務局におこなうことになります。ご自身が国庫に帰属させたいと思う土地が、申請の対象になるのか、申請が受理された場合に承認されるのか。また承認された場合に必要となる負担金がいくらになるのか等、法務局へ事前相談されることをオススメします。

 

加来不動産(株) 井料 隆彦

みらいわブログ 2022年8月号

「賃貸住宅管理業」の登録

みなさま、こんにちは。みらいわメンバーで加来不動産(株)の井料(いりょう)です。
このブログをご覧いただいているみなさまの中に、賃貸不動産のオーナーさまもいらっしゃると思いますので、不動産に関係する新しい法律をご紹介します。「賃貸住宅管理業」の登録についてです。令和3年6月15日から「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が全面的に施行されました。これにともない、賃貸住宅オーナーさまから管理業務の委託を受ける事業者は、賃貸住宅管理業の登録が必要となりました。以下が主な要件です。
① 200戸以上の賃貸住宅を管理する事業者は登録が必要
② 営業所又は事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験等を有する業務管理者を1名以上配置(賃貸不動産経営管理士という資格もあります) 。
③ オーナーへの重要事項説明:オーナーとの管理受託契約締結前の重要事項説明として、「報酬及び具体的な管理業務の内容・実施方法等について書面を交付して説明」すること
④ 財産の分別管理:入居者から金銭など(家賃等)を徴収することがありますが、それらは事業者の自己の固有の財産などと分別して管理しなければならない

掻いつまんでご説明すると、上記内容となります。

これまで、管理を受託する事業者(不動産業者)と賃貸住宅オーナーさまとの間で、明確なルールが無くトラブルとなるケースもあったと耳にします。この法律ができたことにより、オーナーさまも管理を委託する事業者(不動産業者)を選ぶ上で一つの目安ができたように思います。

 賃貸住宅のオーナーのみなさま、管理をまかせようと思う事業者(不動産業者)が、この「賃貸住宅管理業」の登録しているか、②の知識・経験等を有する業務管理者がいるか、③契約前に重要事項の説明をしてくれるか、④財産の分別管理をしているか、確認をされることをおすすめいたします。

井料 隆彦

みらいわブログ 2021年10月号

「親なきあと問題」について

先日、あるお客様から相談を受けました。
そのご相談内容は・・・・・

「わたしには、知的障がいのある息子がおります。わたしも年齢が70を越え、認知症になったり、亡くなった後のことを考えるようになってきました。財産として賃貸マンションがあり、そのお家賃で収入面は賄えると考えていますが、賃貸マンションやお金の管理ができないので心配しています。なにかよい方法はないでしょうか。」
というものでした。
このご相談を受けたとき、【家族信託】を活用することで解決できるなと思いました。

【家族信託】をかみ砕いてご説明します。家族信託とは、自分の財産を「頼できる人(家族や親戚)」に先々不安なこと(管理や処分(売却)など)を、元気なうちに託すことができる手法のことです。託せるものとしては、不動産や現金・預金などです。

ご相談者さま(Aさんとします)のように障がいのある子どもさんがいるご家庭では、親なきあとの問題に頭を悩ませる方も多いことと思います。こういった場合、福祉型家族信託の活用があります。

 Aさんには、知的障がいのある長男Bさんと長女Cさん、ふたりの子どもさんがいらっしゃいます。(ご主人はすでに他界)。 こういった家族構成の場合、受託者(財産管理をする人)を障がいのない長女Cさんに担ってもらいます。
 Aさんに認知症の発症や死亡などが起こった際に、財産管理を受託者である長女Cさんがおこなうことになります。今回のケースでいけば、賃貸マンションの管理・運営を長女Cさんがおこなうことになります。

Aさんがご健在のうちは、財産から生まれる利益(今回のケースでは主に家賃収入)を受け取る人(第一受益者)はAさんです。Aさんが亡くなった後は財産から生まれる利益を受け取る人(第二受益者)は長男Bさんとします。こうすることで、Aさん亡きあと長男Bさんが金銭面やその管理で困ることはありません。
 そして、長男Bさんが亡くなったらこの家族信託契約を終了し、のこった財産を長女Cさんが相続(帰属権利者と言います)する契約にするとよいでしょう。
また、受託者は無報酬でおこなうケースが多いですが、毎月一定額(数千円~数万円)を支払うようにすることも可能です。こうすることで、長女Cさんの労をよりねぎらうこともできます。

【家族信託】では、そのご家庭・ご事情に合った契約をすることができます。
わたしたち一般社団法人みらいわには、家族信託コーディネーターと家族信託専門士が在籍しております。お気軽にご相談ください。

家族信託コーディネーター 井料 隆彦

みらいわブログ 2020年3月号

みらいわブログ 2020年3月号

【財産を持っているひとが認知症になったら・・・】

私は日ごろ不動産の売買に関するお仕事をさせていただいております。その現場でお客さまから「え?自宅なのに売れないのですか???」と言われることが最近増えてきました。実はそうなのです。絶対に売れないということではないのですが、ご自身やご家族が思うタイミングでスムーズに売ることはできなくなります。財産を持っている人(不動産の所有者)が認知症などになり判断能力が低下している(もしくは判断できない)場合、その人の法律行為は認められないからです。(法律行為というとむずかしく聞こえると思いますが、要は「売ります」という意思表示は無効だということとです。) 一つの解決方法として後見制度を利用するという手段がありますが、手続きや費用の問題、裁判所がかかわってくることや時間の問題など、最善の方法とは言えない部分があります。
そこでご紹介したいのが「家族信託」です。家族信託をしておけば、財産を持っている人が認知症になっても自宅の売却をスムーズにおこなうことができます。

事例でご紹介いたします。
<ご相談内容>
●相談者:山田花子さん(78歳・女性)北九州市在住
●現 状:
・ご自宅でひとり暮らしをしている。(ご主人は約2年前に他界された)
・子どもさんはいらっしゃらない。
・法定相続人は、ご兄弟やご兄弟の子どもさんの複数人いらっしゃる。
・現在ある財産は、このご自宅が主で、現預金はあまりない。

●ご希望や叶えたいこと:
・可能なかぎり自宅で暮らしたい。
・ひとり暮らしに不安が出てきたら、どこか施設への入所を考える。
・入所する際そして入所してからの施設費用や生活費など、金銭面で親類に迷惑をかけたくない。
・入所する際に自宅を売却し、さまざまな費用に充てていきたい。
・しかし、その際に物事の判断能力が低下していて、自宅を売れない状況だと困る。

●課題や問題点など:
・手持ちの現金・預金が少ないため、施設に入所する際の費用が足りないであろう。
・もらっている年金も月13万円~14万円程度なので、施設に入所してからの施設費や生活費も不足する可能性が高い。
・費用捻出のために自宅を売却しようとした際の判断能力。
・自宅売却後、認知症などになった場合には預金口座が凍結される可能性が高い。

【対応手法の検討】
① 遺言書を書いておく⇒ そもそも遺言書は、亡くなられた後のための手法ですので、ご自宅の売却や費用の捻出には適さない。
② 成年後見制度を使う(任意後見制度もしくは法定後見制度)⇒ 先でも述べましたが、家庭裁判所が関わってくること、利用するための手続き、後見制度がはじまってからの費用の問題、スムーズな売却手続きとならず売却の好機を逃してしまう等あり、最善の方法とは言えない部分がある。

<家族信託を利用した場合>
家族信託は、ご自分が、任せたい人に財産の維持や管理、処分(売却)を任せることができます。元気なうちにおこなう契約です。財産すべてではなく任せたい財産だけ任せることができます。
ご自宅の売却は、任された人がスムーズにおこなうことができ、手続きをご自分の代わりにおこなってくれます。ご自宅の名義は任された人の名義に変わりますが、ご自宅を売却したお金は、ご自分のものですのでご安心ください。
その後、ご自宅を売却したお金は、任された人が、ご自分のために使ってもらうように決めておくことができます。そして、亡くなられた際に、もし残っているお金があった場合、あげたい人にあげることができますので、遺言書と同じような機能もあります。

家族信託をしておけば、上記のイメージ図のような流れとなります。財産の管理や処分(売却)を任された甥っ子さんが、スムーズにご自宅を売却することができます。今後の費用の問題、手続きの問題、時間の問題をクリアできると思います。
 
私たち『一般社団法人みらいわ』には、この家族信託をコーディネートする担当(お客様からのご相談やお悩みをお聞きし、解決策を考える担当)と、このコーディネートをもとに契約書として形にする家族信託専門士の両方が在籍しておりますので、ぜひ私たちにご相談ください。

加来不動産株式会社
家族信託コーディネーター 井料 隆彦

みらいわブログ 2017年9月号

■【今、大注目の「家族信託」】という方法があります。

みなさま、こんにちは。加来不動産(株)の井料(いりょう)です。
まだまだ暑い日が続きますね。
お盆に家族・親族が集まり、相続にまつわるお話しをされた方も多くいらっしゃっるのではないでしょうか。

今回は、そうした相続に関するご相談と解決方法を紹介します。

Q:私たち夫婦には子供がいません。先祖代々の土地を私の家系で受け継いでいきたいです。
A:今、大注目の「家族信託」という方法があります。

<ご相談内容>
●相談者:Aさん(77歳・男性)東京都在住

家族構成は、わたし(Aさん)と妻B(75歳)です。
わたしたち夫婦には子供がいません。
現在、先祖から受け継いだ土地に自宅を建てて暮らしています。
私が亡くなったらその土地と自宅は妻に相続してもらうつもりで遺言書を作っています。
しかしその後、妻が亡くなると、妻の兄や姉にその土地と自宅が行くことになります。
先祖から代々引き継いできた土地ですので、妻の親族に行くことは本意ではありません。
こういった場合、なにかよい方法はありませんか?

<今までの解決案>
子供がいないご夫婦の場合、「私が亡くなったら妻(夫)へ」という遺言をお互い作っているケースをよく目にします。
しかし、この方法には一つ重大な問題があります。

今回のご相談で言えばAさんが先に亡くなり土地と自宅が妻Bさんに相続された後、
妻Bさんが亡くなったらどうなるでしょう。

妻Bさんが亡くなったときは、すでに夫Aさんはいません。そうすると「夫Aに渡す」という妻Bさんの遺言書は無効になり、結果、妻の兄や姉にAさん先祖代々の土地と自宅が行くことになります。

もちろん、妻Bさんが「夫の親族に渡す」という遺言書を作っておくこともできます。
しかし遺言書は、いつでも書き換えが可能なのです。
つまり、遺言書では夫が妻より長生きしない限り、夫の財産が妻の兄や姉に渡ることを完全に防ぐことができないのです。

<家族信託という解決策>

こういった場合に有効な手段として、最近注目されているのが「家族信託」です。
(誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが「投資信託」や「信託銀行」とはちがうものです。)

委託者:財産を持っている人
受託者:財産を託される人(財産を管理していく人)
受益者:財産から出る利益をもらえる人

簡単にいうと家族信託は、上記3人が登場する契約のことです。
この「家族信託」という契約をすることにより、今までの遺言では不可能だったことが可能になります。

今回のご相談でいきますと、夫Aさんが亡くなった場合、土地と自宅は妻Bさんのものになります。
その後、妻Bさんが亡くなった場合、夫Aさんの兄の息子(Aさんからすると甥っ子)に受け継いでもらいます。(甥っ子さんに、というのはあくまで例ですので、他の親族に受け継いでもらうことも可能です。)

こういったことが家族信託契約で可能になりました。(仮に遺言書でこのように書いておいたとしても無効です。)
これで先祖代々の土地がAさん家系に受け継がれることになります。

相続のことをご存知の方からすると「そんな財産の受け継ぎ方がホントにできるの?」と思われるかもしれません。
そうなのです。できるようになったのです。
平成19年9月に「信託法」という法律が改正され、可能になりました。

今回、ムズカシイ法律論は書いておりません。
今後も「家族信託」を使った問題の解決事例をご紹介していきます。
「家族信託」にご興味を持たれた方は、わたしたち「一般社団法人みらいわ」に「家族信託のコト教えて!」とお気軽にお声かけください。
きっと、あなたのお悩みや問題を解決できると思っています。

加来不動産株式会社
家族信託コーディネーター 井料 隆彦