みらいわブログ 2024年3月号

『音信不通だった父親の相続権を放棄する』

みらいわの無料相談に、次のようなご相談がありました。

「近隣の市から固定資産税の納税を促す通知書が突然送られてきました。そんなところに固定資産を所有していたことがないので、不思議に思い開けてみると、ずっと音信不通だった父親名義の土地建物があり、父親が亡くなったので、相続人である私に納税を行うよう通知書を送ったとのことです。私としては、今さら遠方の土地などをもらっても管理ができないので、今のところは相続放棄したいと考えています。とは言え、財産を相続すればどれくらいの価値があるのかなどと迷っています。」というお話でした。

ご相談者にしてみれば、突然に納税通知書が届き、父親の死亡、土地建物の相続など、続けざまに発生した課題に困惑して、みらいわにご相談があったのだと思います。

このご相談にはどのような課題があるのでしょうか?

(1)音信不通であった親族の財産を相続する際に気をつけること

(2)相続放棄の手続きはできるのか

(3)相続税はかからないのか

(4)固定資産税の納税はどうなるのか

といったことでしょうか?

では、順にご説明していきます。

(1)音信不通であった親族の財産を相続する際に気をつけること

このような場合に、一番困るのは現在の親族の状況がつかみにくいということです。相続は預金や土地建物などの積極財産だけでなく、借入金などの負債もマイナス財産として相続することになるので、隠れている債務などがあるかどうかを慎重に調べる必要があります。

(2)相続放棄の手続きは、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。注意しないといけないのは、相続放棄は「相続の開始があったことを知った日から3か月以内」に手続きをしないと、放棄ができなくなるということです。今回のご相談者は、父親が亡くなったことを、固定資産税の納税通知書が届いて初めて知り、その足でご相談があったので、十分間に合う状況でした。

(3)相続税はかからないのか

お話の中で、「相続税はかからないのですか?」とご質問がありました。相続税は必ず納税しないといけないというものではありません。財産の額から、基礎控除として3千万円プラス法定相続人の人数一人当たり600万円を控除することができます。それよりも財産の額が大きかったら、初めて相続税の申告が必要になる可能性があります。今回のお話では、そこまでの財産は無いようでしたので、ひとまず相続税の心配はないとお伝えしました。

(4)固定資産税の納税はどうなるのか

これに関しても、相続放棄の手続きを済ませてしまえば、納税する必要はありません。相続放棄は相続に関する全ての権利と義務を放棄することを意味するので、債務に関してもその支払をする義務がなくなります。

今回のご相談は、納税通知書が届いてからすぐにご相談があったので、父親の相続に関してどのように対処すべきかをお話しすることができました。相続放棄の手続きに関しても、みらいわの司法書士に確認して、詳しくご説明しました。お帰りの際には、暗かった顔が随分と明るくなっていました。

みらいわには、このようなご相談がたくさん寄せられます。私たちは、このような困りごとを解決して、ご相談者の方の負担をできるだけ軽くすることをめざしています。みなさんも、ぜひお気軽にみらいわの無料相談会をご利用ください。

税理士 半田正樹

みらいわブログ 2023年10月号

いよいよスタート「インボイス制度」が10月1日から始まります!!

皆さま、こんにちは。(一社)みらいわ 事務局の安部です。             今日から10月です。ついに「インボイス制度」がスタートしました。       ニュースなどで耳にする事があると思いますがそもそも「インボイス制度」って?!と思われている方も多いと思うので、簡単にお話させて頂きます。

 

「インボイス制度」とは?

2023年10月1日から導入される消費税の仕入税額控除の適用を受けるための新たな方式です。正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。同日以後、仕入れ税額控除をするためには、より細かな記載事項や要件が設けられている「適格請求書(インボイス)」の保存が必要になります。インボイスを発行するためには、事前に登録申請をおこない「インボイス発行事業者」となる必要がありますが、登録申請は事業者の任意なので、インボイスを発行しない事業者となることもできます。

 

「インボイス制度」の目的は?

消費税は最終的に消費者が負担し、事業者が納税するしくみになっています。ところが2019年10月1日から8%と10%の複数税率を新たに採用したことで、経理処理が複雑化し正しい消費税納税事務が難しくなりました。そこで適用税率や税率ごとの消費税額を請求書に記載する事を義務付けたインボイスを発行したり受け取ったりすることで、取引ごとの正確な消費税額と消費税率を把握し、消費税納税額を正しく計算することができるようになります。また、税金の一部が国へ納められずに事業者の手元に残るいわゆる「益税」問題の解消が期待されます。

 

「免税事業者」への影響

これまで納税を免除されてきた基準期間(前々事業年度)課税売上高が1,000万円以下の免税事業者への影響は少なくありません。もしも免税事業者が登録申請をしてインボイス発行事業者となれば、今まで免除されていた消費税の納税義務が生まれ、新たな負担となります。だからといって免税事業者のままでいると、取引先が仕入税額控除の適用を受けることが出来なくなる為、それを理由に取引を断られたり、敬遠されたり、値下げの要求される事があるかもしれません。中小規模の事業者にとっては、切実な問題です。

 

インボイス制度は、消費税のしくみがそもそも複雑であることに加えて特例や経過措置も多く、どのような選択をすればその事業者にとって有利なのか判定が難しいところです。                                  そんな時は、ぜひお近くの税理士さんにご相談されるなどご検討下さい。

 

(一社)みらいわ 事務局 安部幸子

みらいわブログ 2023年9月号

「相続土地国庫帰属制度」

 

令和5年4月27日から『相続した土地を国が引き取る』という制度がスタートしました。

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいというニーズが高まっています。

 

このような土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。

 

私は不動産会社に勤務していますので「自分たちには必要がない不動産がある」「こういった不動産を手放す方法はありませんか?」とご相談をいただくことがあります。こういった場合に、この制度を検討するのもひとつだと思います。

 

ただし、不要という不動産すべてを国に帰属させる(国に引き取ってもらう)ことができるわけではありません。

 

下記のような不動産は申請の対象外とされています。

 

■ 建物がある土地

■ 担保権や使用収益権が設定されている土地

■ 他人の利用が予定されている土地

■ 土壌汚染されている土地

■ 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

 

また、申請が受理されても、審査の結果、承認を受けることができないケースもあります。

 

■ 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

■ 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

■ 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

■ 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

■ その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 

このような土地は承認を受けられないとされています。

 

そして、費用についてですが、審査手数料が土地一筆当たり14,000円です。(申請時に必要)。

手数料の納付後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認となった場合でも、手数料の返還はないようです。

また、実際に承認を受けた場合には、10年分の土地管理費用相当額の負担金の納入が必要になります。この金額については、土地の地目や面積に応じて算定されるようです。

 

この制度の申請は、法務局におこなうことになります。ご自身が国庫に帰属させたいと思う土地が、申請の対象になるのか、申請が受理された場合に承認されるのか。また承認された場合に必要となる負担金がいくらになるのか等、法務局へ事前相談されることをオススメします。

 

加来不動産(株) 井料 隆彦

みらいわブログ 2023年5月号

《税理士は相続税に詳しくない!?

「え!!税理士の先生ってみんな相続税に詳しいんじゃないんですか!?」と驚かれる方が多くいらっしゃいます。じつはこの話、本当なんです。

なぜかと言いますと、実際に相続税がかかっている人の割合は、2021年は全国平均で9.3%となっているので、100人のうち約9人ということです。さらに地方ともなるとさらにこの割合はグッと下がってきます。

さらに相続税の申告をするための相続税評価の計算はなかなかテクニカルで、専門知識の差によって相続税が多くなったり少なくなったりすると言われるので、相続税の申告の仕方によっては、税理士が依頼者から訴えられることもあります。

それゆえ、相続税の申告は「少ない上に、もめる可能性大!」なので、税理士も敬遠する傾向にあるのです。

 

相続税のことで税理士に相談する場合、くれぐれもご注意ください(^^)

加来不動産株式会社
代表取締役 加来寛

みらいわブログ 2023年3月号

『可愛いペットの一生、自分の死後も困らないように』

我が家のペットは、シーズ犬の女の子で年齢は12歳、名前は『マー子』です。我が家の一人娘なので、小さいころから一度も怒ったこともなく、躾もしないまま育ちました。ご想像の通りわがまま放題で、私たち夫婦は彼女に下僕のごとく仕えています。

とは言え、その魅力は絶大で、帰宅時に玄関を開けると、尻尾を力いっぱい振りながら駆け寄ってきます(残念ながらもう一人は駆け寄ってきませんが)。それだけで一日の疲れが吹き飛んでしまうほどの魅力を持つ、私にとっては大切な存在なのです。

ただ、このところは寄る年波のせいか、あちこちと病気や傷が絶えず、かかりつけ医・眼科・元気の出る栄養剤の注射をお願いする所と、まるで私自身の病院通いと同様の状況ですが、ペットの寿命そのものは、医療技術の進歩もあって年々伸びているそうです。

私のところは、私も妻も今のところ元気で、『マー子』の年齢を考えると、何とか彼女を看取ってあげられそうですが、ご高齢の方で、若いペットを飼っていらっしゃる方は、「自分に万一のことがあったら、この子はどうなるんだろう?」と、不安になることはありませんか?

この問題に対処するために、これまでは、信頼する人に一定のお金を渡しておき、ペットの世話を託すことが一般的でした。しかし、この方法では、世話をお願いした人の誠意を信じることしかできません。もちろん、多くの場合はちゃんと世話をして頂けると思いますが、より安心な仕組みがないのかとお考えの方もいると思います。

そのような方のために、最近『ペット信託』なるものが話題になっています。これは、法律の専門家が考案したもので、商標登録もされているそうですが、なかなか興味深い制度です。

少しわかりづらいのですが、おおよそは以下の通りです。まず、ペットの飼育者(『委託者』と言います)は、自分のペットの世話をお願いしたい人を探し、自分に万一の時は、ペットの世話を任せたいことを説明し、あらかじめ了解を得ておきます。そして、その世話代や医療費などの飼育費とお礼の費用を計算して、その資金を準備します。

これをそのまま世話をしてくれる人に渡すのではなく、更にそのお金を管理してくれる人(これを『受託者』と言います)を探し、この受託者にお金を預けて、自分の死後は、毎月必要な飼育費を、世話をしてくれる人に払ってもらうのです。そして大事なのは、これを、きちんとした契約書にして三者で合意し作成しておくことです。

契約書には、して欲しい世話の内容や、ペットが亡くなったときの残金を誰に渡すかなども盛り込んでおくと、自分がいなくなった後も、安心してペットのことを託せるという訳です。

この制度は、専門的な信託契約に基づくものなので、作成する場合は、法律の専門家に相談して作成することが必要です。一定の費用はかかりますが、大事なペットのことを考えると、一度考えてみる価値はありそうです。

私たち「みらいわ」の会員には、信託契約に詳しい専門家もいますので、もし、このようなペット信託を作りたいとお考えの際は、一度相談して下さい。専門的なアドバイスをさせて頂きます。

 

税理士 半田正樹

みらいわブログ 2022年8月号

「賃貸住宅管理業」の登録

みなさま、こんにちは。みらいわメンバーで加来不動産(株)の井料(いりょう)です。
このブログをご覧いただいているみなさまの中に、賃貸不動産のオーナーさまもいらっしゃると思いますので、不動産に関係する新しい法律をご紹介します。「賃貸住宅管理業」の登録についてです。令和3年6月15日から「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が全面的に施行されました。これにともない、賃貸住宅オーナーさまから管理業務の委託を受ける事業者は、賃貸住宅管理業の登録が必要となりました。以下が主な要件です。
① 200戸以上の賃貸住宅を管理する事業者は登録が必要
② 営業所又は事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験等を有する業務管理者を1名以上配置(賃貸不動産経営管理士という資格もあります) 。
③ オーナーへの重要事項説明:オーナーとの管理受託契約締結前の重要事項説明として、「報酬及び具体的な管理業務の内容・実施方法等について書面を交付して説明」すること
④ 財産の分別管理:入居者から金銭など(家賃等)を徴収することがありますが、それらは事業者の自己の固有の財産などと分別して管理しなければならない

掻いつまんでご説明すると、上記内容となります。

これまで、管理を受託する事業者(不動産業者)と賃貸住宅オーナーさまとの間で、明確なルールが無くトラブルとなるケースもあったと耳にします。この法律ができたことにより、オーナーさまも管理を委託する事業者(不動産業者)を選ぶ上で一つの目安ができたように思います。

 賃貸住宅のオーナーのみなさま、管理をまかせようと思う事業者(不動産業者)が、この「賃貸住宅管理業」の登録しているか、②の知識・経験等を有する業務管理者がいるか、③契約前に重要事項の説明をしてくれるか、④財産の分別管理をしているか、確認をされることをおすすめいたします。

井料 隆彦

みらいわブログ 2022年5月

父の相続

 私事ですが、先月、私の父が亡くなりました。
 今年に入ってからは、自宅で訪問看護士の方や訪問診療をしてくださるお医者さんの手厚いサポートを受けながら、家族としても直接父の世話をすることができ、最後は本当に穏やかに眠ったまま、母と私の家族で見送ることができました。そのことは私たち家族にとっても本当に良かったかなと思います。関係者の皆さまには本当に良くしていただき、この場をお借りして御礼を申し上げます。

 司法書士をしておりますと、相続が発生した方の相談を受けることも多く、これまでも「何から手をつけていいかわからなくて焦ります」といった相談を受けては、「焦らずできることから少しずつ進めればいいんですよ」と答えていましたが、自分がその立場になってみるとやはり同じような気持ちになるものですね。
 役所関係の手続き、金融機関や保険関係の手続き、不動産の手続きに加え、一連の仏事があります。役所関係の手続きはなんとかこなし、税務や保険、登記関係は自分も含め、みらいわのメンバーが助けてくれますので、その点は安心しきっておりますが、特に仏事についてはほとんど何もわかっておらず、一から勉強している毎日です(汗)。
 幸い、葬儀や四十九日法要等の仏事をお願いしているお寺のご住職が、私の中学・高校の同級生でもあり、ひとつひとつ指導を受けながら進めております。

 相続の手続きの経験は、皆誰しも人生でそう何度もあることではありません。私のように相続に深く関わっている仕事をしている人間であっても、やはり戸惑いや焦り、不安を感じます。
 今後の相続への不安や疑問等を抱えている方がいらっしゃいましたら、我々みらいわにぜひお気軽にご相談ください。

たかき司法書士事務所
 司法書士 高木 誠

みらいわブログ 2022年2月号

《建物を解体するならお早めに!!》

 結論から言えば、建物を解体する予定があり、費用をなるべく抑えたいのであれば、令和4年3月末までがいいですよ、というお話です。なぜなら、解体費用が値上がりするからです。

 じつは、令和3年4月から石綿(アスベスト)飛散防止対策が強化され、事前に石綿が使用されていないか調査が必要となり、使用が認められなければそのまま解体するという運びになっていました。
しかし令和4年4月からは石綿の有無にかかわらず、事前調査結果の県への報告が必要となります。つまり、解体業者の手間暇と費用がかかってくるため、今までの解体費用(単価)では請け負えなくなる、ということです。
また、この流れはさらに強化されてきますので、今回のタイミングで解体できなかったとしても費用を抑えたいのであれば、なるべく早めに解体することがおススメです。
詳しくはこちら→https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/asbesutos-kaisei.html

加来不動産株式会社
代表取締役 加来寛

みらいわブログ 2022年1月号

みなさま,新年おめでとうございます。
私ども「一般社団法人みらいわ」は、財産管理、相続や遺言、そして不動産評価や登記事務などについて、それぞれの専門家が、みなさまのお困りの問題を解決いたします。
法務の問題に関しては、弁護士や司法書士が、税務の問題は税理士が、そして適正な不動産評価を行うための不動産鑑定士、労務管理の問題を社会保険労務士が、不動産の管理や運用に関しては不動産取引士、さらにこれらを補完するための生命保険コンサルタントが、専門的な視点から協議を重ね、皆様がお困りの問題を解決に導くことができる体制を準備しています。
このような専門家集団は、全国的にも珍しく、ありがたいことに、ご相談いただいた方々には高い評価をいただいています。何より、毎週第曜日に実施している『無料相談会』は、ご相談内容に必要な専門家が待機し、みなさまに自由に相談していただけます。
最近では、ご自宅等について遺言を残されたい方、家族信託により、遺言では十分に守れない財産のご相談、あまりに高すぎる固定資産税評価額の鑑定評価、そして、相続の申告や事前の対策など、様々に活用していただいています。
みなさまも、ぜひこの無料相談会(要事前予約)をご利用いただき、将来の安心を手に入れてください。皆様の安心を実現することが、私ども『みらいわ』が目指すところなのです。

税理士 半田正樹

みらいわブログ 2021年12月号

お葬式ができない方が増えています

今年最後のブログとなりました。一年が経過するのはあっという間ですね。
子供の頃は時間が経つのが遅かった気がいたしますが、皆様はいかがでしょうか?
今年最後のブログは、私が今年、数回経験しましたお葬式ができない方(お葬式難民??)のお話です。

近年、財産はあってもご自分が亡くなった際にお葬式を執り行うことができない方が増えています。「えっ、そうなの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
そのお葬式を執り行うことができない理由とは、適切な親族等がいないためにお葬式ができない、あるいはその費用の支払いを託す人がいないというものです。
令和元年のある調査では、世帯数でみると高齢者(65歳以上の方)のいる世帯数に占める65歳の単独世帯の割合は28.8%で、高齢者世帯の約3分の1に迫る勢いなのですが、このような状況からも上記のような事態が起こり得ることがうなずけます。
 そこでこのような事態を回避するため方法が問題となりますが、私のおすすめは生前に信頼できる人(専門家を含む)や法人に葬儀の執り行いや費用の支払い等を依頼しておくことです。
 その方法としては「死後事務委任契約」や「遺言書を作って遺言執行者に指示する」などがあります。社会福祉協議会でも、事前に預託金を預り、葬儀や納骨や各種債務の支払い等のサービスを行っているところもありますよ。
 今年、私は2件も他人様のお葬式を執り行いました。それはいずれも私が成年後見人をしている高齢者の方がお亡くなりになった事案なのですが、お二人とも親族はいらっしゃるものの、子供さんと疎遠となって連絡がとれないため、あるいはお子様がいらっしゃらずご兄弟も高齢のために、お葬式を執り行う人がいないというものでした。
 そこで、本来は成年後見人には葬儀を行う義務などないのですが、人道上も心情的にも放ってはおけないので、私が葬儀会社と打ち合わせをしてお通夜、告別式、火葬、お寺への納骨等をいたしました。お通夜と告別式には、亡くなるまで入所されていた介護施設の方が10名ほど参列して下さったので、ご本人もきっと喜ばれたに違いありません。
実は、ご親族がいないあるいは疎遠になられている方が亡くなった場合に問題が発生するのは、葬儀だけではありません。ご本人が亡くなった後に直ちに発生する事務として「死後事務」と言われるものはあるのですが、例えば、今回問題となった葬儀(通夜、葬式、火葬、埋葬、納骨、永代供養など)の他に、ご遺体の引き取り、関係機関への死亡等の通知(健康保険、年金、預貯金等)、医療費や水道光熱費や施設費や医療費などの債務の支払、居住先(施設、賃貸アパート)の明け渡し、残置物の処分、相続人への財産引渡しなど様々です。これは一体誰が行なうのか?という問題です。

このような死後事務を行うご親族や知人がいらっしゃらない、あるいはいらっしゃってもそのような面倒をかけたくないと思われている方は結構多いように思います。  私も、そのような方で、遺言書と死後事務契約を利用することによって対応することになっているお客様が5,6名いらっしゃいます。
ある80歳のご婦人の方でまだまだお元気なのですが、ご主人もお子様もいらっしゃいません。このため、この方はご自分にもしものことがあったら、ご遺産を、恵まれない方を支援する団体に寄付する旨の遺言書を作成され、その執行と共に債務の支払や葬儀等をすることを私に依頼されました。このため、私はその方の死後事務にどのようなものがあるかをその方とご一緒に考え、確認整理をしています。この確認整理は毎年更新しております。
その方が今年の夏に少しお加減が悪くなられたことをきっかけに、先日その方と二人で葬儀社に行って葬儀の内容を相談してきました。そして、祭壇や骨壺やお返しの品はどれがいい?などと多くのことを和気あいあいと二人で話し合いながら決めてきました。骨壺を決める際に、私はパンフレットの中にあった有田焼の美しい桜色の骨壺がいいのではと申しましたところ、その方は、「それはダメなのよ。だってご先祖様の白い素焼きの骨壺より良い物の中に新参者の私が入るのは申し訳ないでしょ? それに、『おまえは生意気だよ』ってお墓の中でご先祖様達からいじめられたら困るでしょ?」と言われました。そしてご先祖様と同じ白の素焼きの骨壺を選択されました。そして私に「こういうことって大事なのよ。先生も出る杭は打たれる状態にならないように気をつけてくださいね」とアドバイスして下さいました。
その日はその方が大好きな「ロイヤルホスト」で、二人で夕食をいただきました。その方はお葬式の準備ができたことで、とても安心されたご様子でした。

しかし…、私はふと考えました。
私がこの方の御葬儀を執り行うときには、この方はもうこの世にはいらっしゃいません。なので、私は依頼された弁護士として務めを果たす際には、お元気だったこの日のお姿や素敵な笑顔、骨壺選びの事、そして大好きな野菜スープを美味しそうに召し上がっておられたご様子などを思い出して、きっときっと涙があふれて止まらないと思います。今、そのことを考えるだけでも涙が出てきてしまうのですから。
私は随分以前に実母を亡くしており、この方とのお付き合いの中で、どことなく母親のようにも思えるので、私は2度も母親を失うことになるのでしょうね。「ご縁」というものは素晴らしいものではあるれど、悲しくもあります。

さて、今年もあとわずかとなりました。皆様この1年間ほんとうにご苦労様でした。
来年も「みらいわ」をよろしくお願いいたしますね。
それでは、皆様、よき新年をお迎えくださいませ。
  
  弁護士 篠木潔