みらいわブログ 2019年6月号

「犬と猫」

一 心癒されるもの
 皆様、こんにちは。弁護士の篠木です。
 皆様はペットを飼われていますか?
 一口にペットと言っても犬、猫、ハムスター、メダカなど様々です。
 ペットは生き物に対する慈愛の心を育むだけでなく、家族も同然なので、とても心が癒されます。あるアンケートでは、多くの人が、ペットは「生活に喜びを与えてくれる大切な存在」、また「健康面や精神面、及び人と人とをつなぐコミュニケーションにおいても重要な存在である」と回答しています。
 ちなみに、平成30年度のある統計では、全国の犬と猫の飼育頭数(推計)は、犬が890万頭で猫が965万頭といずれも多く、犬猫が人間にとってどれほど必要な存在であるかが分かります。
 そんな中、私も猫を飼い始めました。猫種はスコティッシュフォールドといって耳が前に垂れている可愛い白猫です。私の希望の光になって欲しいのと、源氏物語の光源氏のように美しい雄猫になって欲しかったので、名前は「篠木光」君と名付けました。親バカならぬ猫バカですね(笑)。
 両手の掌で包むことのできた800グラムの子猫ちゃんは、わずか1年でなんと4キロにもなってしまいました。しかしそれでも光君はとても可愛く、私は日々癒されています。

二 皆様は犬派?それとも猫派?
 ここで質問ですが、皆様は犬と猫とではどちらの方がお好きですか?
 私は、以前は飼い主の命令をよく聞く従順な犬の方が好きでしたが、高校時代に初めて猫を飼って、一発で猫の魅力にとりつかれてしまいました。
 猫は人の命令に従いません。「お腹が空いたニャア」と体全体ですり寄ってくるかと思えば、気分が向かねばどんなに名前を呼んでも振り向きもしません。つれない態度ですよね。
ところが猫はシッポで様々な感情表現をしてくれます。シッポをまっすぐにピーンと立てて歩いている時は気分が良く自分を見て欲しいという証拠。驚いたときはシッポが3倍くらい太くなります。しっぽがせわしく右左に揺れている時は何? それは気分が悪かったり戸惑ったりして危険な目印です。
また、猫は大変綺麗好きで、食事の後はいつも時間をかけて丁寧に毛づくろいをします。犬とは違い体臭がほとんどないのは得点が高いです。
猫は高いところ、狭いところが大好きです。空き箱を置いてあげると、その中で丸くなって寝てしまう姿はほんとに可愛いです。
そうそうご存知ですか? 猫の体に私達の顔をうずめると「日なた」の香りがするんですよ。
また、猫は器用に手を使うことができます。いわゆる猫パンチのほか、両手で上手に玉を取りますし、水を手ですくって飲むことのできる猫ちゃんもいます。だから、異論はおありでしょうが、私は、サルと同じく手を使える猫の方が犬よりも実は賢いのではないかと思っております。
 自己の意思に反して人間に媚びることをせず、しかし人間社会に上手に溶け込んでいる猫族は、私は「さすがだニャア」と思います。

三 犬と猫の運命
 ところで皆さん、最近は以前のように野良犬を見かけなくなったと思いませんか? 私の子供の頃は至る所に野良犬がいて、恐ろしい目に遭うことも頻繁にあったのに。なぜ最近では野良犬を見かけなくなったのか?
 実はそれは各地方自治体が、狂犬病予防法や条例に基づき野良犬や飼主の不明な犬を捕獲し積極的に殺処分にしているからなのです。猫には狂犬病予防法のような法律がないため自治体が積極的に捕獲することはできません。だから野良猫が増えて逆に野良犬は減っているのだとばかり思っていました。そうだとしたら、犬族は可哀想だニャアと思いました。
 ところがよ~く調べてみると、なんとなんと殺処分にされている数は犬よりも猫の方が圧倒的に多いのです。これは猫派の私にとっては大変ショックでした。昨年12月に公表された環境省の平成29年度の殺処分の統計では、犬は約8300頭、猫はなんと3500頭でした。ちなみに平成25年度は犬が約2万9000頭、猫はなんと10万頭と驚くべき数字でした。どうしてこんなにたくさんの猫が殺処分にされているのでしょうか?
 それはいわゆる動物愛護法で、行政が犬猫の所有者や拾った者からその引取りを求められたときはこれを引き取る義務があり、この引き取られた犬猫が保健所や動物愛護センター等で処分されているからなのです。狂犬病予防法の対象外の猫たちであっても、決して油断のできない恐ろしい法律です。動物「愛護」法という名称なのに、殺処分を適法化する法律なんですね。とても驚きです。
 処分される犬猫の中には、飼い主が飼うことができずに、捨てたり保健所などに持ち込まれたりする例も多いようです。前述のように、人間はあんなにも犬猫を必要としていたはずなのに、人間と同じ「命」があるのに、人間様は本当に身勝手なものです。

四 高齢者とペット
 そんな中、近年では高齢者の方々がペットを飼う例が増えてきています。様々な不安を抱えることの多い高齢者の方にとっては、ペットを飼うことで「情緒が安定するようになった」「寂しがることが少なくなった」と感じられる方が多いそうです。ペットの癒し効果です。
 しかし一方で、ペットを飼育することで介護に支障を来たす例も出始めています。すなわち、身体の衰えや認知症のために在宅生活が困難となって施設に入所する必要があるにもかかわらず、「ペットと離れたくない」「ペットを一人おいていけない」と入所を拒まれるのです。
 それはそうでしょう。ご本人にとっては、ペットは家族なのですから。犬猫の寿命は十数年と長いので、飼い主の年齢次第では犬猫よりも先に亡くなられるという場合も少なくありません。だから、ご自分が施設に入ったら…、もし自分が死んでしまったら…と犬猫のことを心配されるのですよ。
 残念ながら現時点で犬猫と同居できる施設はめったにありませんが、今後は、余生を、心癒されながら過ごすためにも、ペットと同居できる施設が数多く増えるとうれしいですね。

 私は現在56歳ですので、光君が天寿を全うするころには、私はもう高齢者になっているかもしれません。それゆえ、私は光君をしっかりと看取るためにも健康に気をつけて弁護士の仕事をやっていこうと思います。
 そうしてこれからも光君と仲良く毎日を過ごし、私の希望の光となってくれた光君がとうとう天寿を全うした時は、きっと私は何日も何日も大泣きをしてしまうことでしょう。
                           おわり

弁護士 篠木潔

みらいわブログ 2018年5月号

「合理的配慮」という考え方をご存知ですか??

一 皆さまは次の事例は差別にあたると思われますか?
①ある旅館は、警報音が聞こえないと火災等の緊急時の避難誘導に支障をきたすことを理由に、耳が全く聞こえない方の宿泊を断っている。
②知的障害のあるAさんは市役所から届いた障害年金のパンフレットの漢字が読めないので、フリガナを付ける等もっと分かり易くして欲しいと求めたが、係員からそういうパンフレットは準備できていないと断られた。
 この二つの事例の違いは、①は障がい者であることに着目して不利益な取扱いをしているのに対し、②はそうではなく、単に障がい者が困っている状況に積極的には配慮ができていないというに過ぎない点です。
 例えば①の事例のように障がいを理由とする不利益な取り扱いが差別にあたるのは今や常識ですが、ここではさらにそれを超えて障がい者に対する積極的な配慮(ある意味「優遇」)をしないことで「差別」と同じことなってしまうのかということが問われています。
二 大きな転換をもたらす障害者差別解消法
 国連での障害者権利条約や我が国の障害者基本法の理念を具体化した「障害者差別解消法」(以下「本法」と言います)が、平成28年4月に施行されました。
本法では、行政機関や事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(「合理的配慮」)を行うべきことを求めています(但し、事業者は努力義務にとどまる)。
 それゆえ、事例②で市役所がAさんの求めをそのまま放置していると法律違反になり「差別」にあたる可能性があります。
三 成長する「平等」「差別」の考え方
 本法によって実務的にも障がい者差別の考え方が大きく変わり、現在、行政機関や一般企業は従来とは異なる大きな対応を迫られています。
 その基になっている障害者権利条約の「障害」の考え方は、障がい者の日常社会生活に不利益や困難は、本人の心身の機能障害だけに起因するのではなく、むしろ社会における様々な障壁(環境)と相対することによって生ずるという考え方(社会モデル)です。
つまり周りの環境が適切に整備され他者が配慮すれば、心身の障がい
による不利益状態(障がい、差別)は解消されると考えるのです。
言われてみれば確かにそうですよね。
だから一定の場合に障がい者に合理的配慮をしないならば、なんと「差別」と同じなのだと考えることにしたのです。
 このように人類はここに至って「平等」や「差別」の考え方をさらに進化させました。
黒人差別が良くないことだと人類が気付いたのは、アメリカ合衆国大統領リンカーンの南北戦争の頃だし、日本人が女性差別は良くないことだと気付いたのは戦後になってからでした。
そしてようやく今、障がいは環境が生み出すという側面があり、障がい者に対して配慮しないことが、場合によって差別と同じことになると考えるようになったのです。
「基本的人権」は「生き物」だと言われることがありますが、基本的人権はどんどん成長しているのですね。

弁護士 篠木 潔