みらいわブログ 2020年9月号

「心ふるえる詩」
~金子みすゞの詩を読まれたことはありますか?(第2回)

1 はじめに
 皆様、こんにちは。弁護士篠木潔です。
さて、前回のブログでは、私と金子みすゞの出会いについてお話しました。
今回は、金子みすゞの詩集の中で私が大好きな詩をいくつかご紹介させていただきますね。

2 皆様はどの詩がお好きですか?
私は好きな詩が多くて選ぶのに苦労するのですが(笑)、以下の詩はいつ見ても心がふるえます。これらの中で私が一番好きな詩は・・・・。??
これは最後に申しましょう。
皆様も以下の詩の中から最も好きな詩を一つだけ選んでみてください。

【蜂と神さま】
蜂はお花のなかに、
お花はお庭のなかに、
お庭は土塀のなかに、
土塀は町のなかに、
町は日本のなかに、
日本は世界のなかに、
世界は神さまのなかに。

そうして、そうして、神さまは、
小っちゃな蜂のなかに。

~とてもスケールが大きく宗教観・宇宙観を漂わせる詩です。その最大スケールの神様を、一挙に小っちゃな蜂の命へと返していく跳躍と着地が実にみごとです。「そうして、そうして」と間をとり、主語の「神様は」をわざと行の一番下にもってきて、最後は小さな蜂だけで締めくくる。こうすれば、どんなに小さな生き物の命にも神が宿っていることを上手に伝えることができますね。小っちゃな蜂の中にも神様がしっかりといらっしゃる。それで勇気や安心感が出てきますし、また、だからこそ簡単に壊れてしまいそうな小っちゃな命をも大切しなくちゃという思いが出てきます。これが金子みすゞのメッセージなのかもしれませんね。~

【積もった雪】
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。

下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。

中の雪
さみしかろな。
空も地面もみえないで。

~積もった雪を擬人化して3つの部分に分け、その気持ちを思いやる着想がおもしろいです。「上の雪」と「下の雪」のつらい気持ちは何となく理解できます。しかし、真ん中だから寒くないし重くもないので良さそうだと思われる「中の雪」が、そんな気持ちを抱いているだなんて思いもよりませんでした。世の中には私達の気づかない悲しみやつらさがたくさんあるのでしょうね。それを思いやる力が果たして自分にあるのでしょうか。ふとそう思わせてくれる詩ですね。雪を見るといつもこの詩を思い出します。~

【私と小鳥と鈴と】
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速くは走れない。

私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

~この詩は小学校の国語の教科書にも載っている有名な詩です。一人ひとりの個性や違いを大切にするとともに、誰もがかけがえのない存在であるという、ゆるぎない確信が最後の行に表れています。短く生き抜いたみすゞの確信でしょう。それも「人」を超えて「みんなちがって、みんないい」と言い切っているところが気持ち良いです。なんてことないフレーズですが、とても力強く説得力がありますよね。
また、最後から2行目と題名とを見比べてみてください。私は最後から2行目の「鈴と、小鳥と、それから私」が題名の「私と小鳥と鈴と」と順番と逆になっているところも好きです。みすゞはどうしてそのようにしたのでしょうね? みすゞに尋ねてみたいです。~

【露】
誰にもいわずにおきましょう。

朝のお庭のすみっこで、
花がほろりと泣いたこと。

もしも噂がひろがって
蜂のお耳へはいったら、

わるいことでもしたように、
蜜をかえしに行くでしょう。

~なんとも可愛いみずみずしい詩ではありませんか。おとぎ話の世界です。ほろりとこぼれ落ちた露は花の涙なのでしょう。わるいことでもしたように、蜜を返しにいくであろう蜂も優しいし、誰にも言わずにおきましょうというまなざしも温かい。身近な庭の隅っこに、誰も知らないこのように気遣う世界があるのですね。それを七五調の優しい音律で教えてくれています。わずか6行の詩ですが、みすゞの優しいまなざしに涙が出そうです。この「露」は私が一番大好きな詩です。

皆さまはどの詩がお好きでしたか?
皆さまもぜひ金子みすゞの「詩集」を手にしてみてください。みすゞは様々な対象をモチーフに、雰囲気も変えていろんなことを私たちに伝えようとしてくれています。このため、同じ詩でもその時々で私たちの感じ方や詩の味わいが異なる場合もあります。それゆえ、みすゞの詩は大切なことをたくさんたくさん教えてくれますよ。
詩や歌は静かに私たちを支える力になってくれます。

私は、こんなに素晴らしい詩を書く金子みすゞに一度会ってみたかったです。

弁護士篠木潔

(詩の出典「金子みすゞ童謡全集」(JULA出版局)より)

みらいわブログ 2020年8月号

「心ふるえる詩」
~金子みすゞの詩を読まれたことはありますか?(第1回)

1 はじめに
 皆様、お元気ですか。弁護士篠木潔です。
新型コロナはなかなか収束せず、社会は第2波のおそれにおののき、そんな中、豪雨災害も相次ぎ、さらに夏の暑さで熱中症への対策も必要です。皆様も、くれぐれもお体ご自愛くださいませ。

2 金子みすゞの詩との出会い
さて、これから私の大好きな詩人の話をさせていただきます。
皆さまは、金子みすゞの詩を読まれたことはありますか? 東日本大震災の後、「こだまでしょうか」という詩がテレビで流れていたのでご存知の方も多いかと思います。「私と小鳥と鈴と」は小学校の教科書にも取り上げられましたね。
私は金子みすゞが大好きです。彼女の詩は私の心の原点であり戒めともなっており、彼女に深く感謝しています。
私は今年で弁護士歴23年ですが、弁護士になって5年目が経過した頃、私は法的知識を駆使して事件を迅速に解決できる優秀な?弁護士となり、周囲からも先生先生と持ち上げられ少し傲慢になっていました。人間の欲や欺瞞が渦巻く日常紛争業務の中で私の心も殺伐としていました。多くの依頼者の方にも様々な苦悩や悲しみがあるにもかかわらず、それに全く配慮することなく上から目線で「事件」の「処理」にあけくれ、勝訴を自慢していました(このためか私はこれまで裁判で3回しか負けたことがありません)。
そんな折、私は出張先で時間つぶしに立ち寄った本屋さんで、ある詩集が目に留まり何気なく手に取ったのです。それが金子みすゞの童謡集でした。そして、帰りの新幹線の中でその詩集を読んで強い衝撃を受けました。それは「大漁」という詩でした。

3 何万の鰮(いわし)のとむらい
 大漁
朝焼小焼だ
大漁だ。
大羽鰮の
大漁だ。

浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。

浜で大賑わいの人間様の知らないところで、なんと、何万のいわしのお葬式が行われているというのです。誰かの幸せの陰で見過ごされがちな小さな命の悲しみに思いを寄せた詩です。それをわずかな行数と子供でも分かる簡単な言葉で表現しています。見えないけれども確かに存在する弱いものへの直観力と慈愛に満ちたまなざし、そして浜から一気に水面下へと視点を移して対照化する力強さが好きです。
列車の中で一時の安息のため、心が無防備だったのでしょうか。私はわずか十行のこの詩を読んで、涙がポロポロとこぼれてきて止まらないのです。私の割り切った弁護士活動の中で傷ついた関係者の方も大勢いらっしゃっただろうと深く反省しました。そして私も金子みすゞと同じような目と心を持ちたいと思いました。
そうして手に取った童謡集を読み進める中で私がもっと驚いたのは、そんな慈愛に満ちたこの詩人が、当時「若き童謡詩人の巨星」と称賛されながらも半世紀にわたってその詩が埋もれていたこと、そして夫に詩作を禁止され不遇な人生を過ごし26歳の若さで自死してしまったということです。
何ということだろう。こんなに素敵な詩を書ける人なのにどうして?? やりきれなさで心がふるえました。
私はそれ以来、何かあるとみすゞの詩集に触れています。つらいことがあったとき、傲慢になりそうなとき、仕事に疲れたときなど様々です。毎年正月にも必ず読むようにしています。それは新年の自分への戒めのためと大好きなみすゞと会話をしたいと思うからです。
この「大漁」の詩が私の出発点となりました。

いかがですか? よくもまあ、こんな優しく素敵な詩が書けるものだとつくづく感心いたします。皆さまもぜひ金子みすゞの詩集を手にしてみてください。いろんな詩が載っていますよ。

次回ブログでは、金子みすゞの詩集の中で私が大好きな詩をいくつかご紹介いたしますね。                  (続く)

弁護士 篠木潔

(詩の出典「金子みすゞ童謡全集」(JULA出版局)より)

みらいわブログ 2020年7月号

「新しい生活様式」

 こんにちは。みらいわの安部です。
新しい時代に移り変わり、東京オリンピック開催まであとわずか!だと期待に胸を膨らませていた矢先、新型コロナウィルス肺炎の猛威のため東京オリンピック開催の延期。
 世界中で多くの感染者が続出。連日トップニュースで感染状況が取り上げられ今までに無い経験に多くの方が戸惑っている事と思います。
 国内でも外出自粛などの対策を講じていますが、現在も感染者数が報告されています。
 また、経済面でもコロナ倒産が激増しており、持続化給付金等の政府の企業支援が急務とされています。
 更に、私たち自身も新型コロナ感染を防ぐことを踏まえての日常を考えていると、今までどおりという訳にはいかないようです。既に、言われている「新しい生活様式」を取り入れていく事が必須となります。
 そこで「新しい生活様式」の実践例をまとめみたので良かったらご活用ください。

 ①一人ひとりの基本的な感染対策
  *感染防止の3つの基本(身体的距離の確保・マスク着用・手洗い)
  ・人との距離は、できれば2m(最低でも1m)空ける
  ・休日のお出かけは、屋内より屋外で
  ・会話は、できる限り真正面を避ける
  ・外出時は、マスクの着用
  ・外出から戻ったらまず手洗い(洗えるなら顔洗いも)
  ・手洗いは30秒位、水と石けんで丁寧に洗う
  ・できれば毎朝の検温
  *移動に関する感染対策
  ・感染が流行している地域への移動
  ・帰省や旅行は控えめに
  ・出張もできる限り控える
  ・移動先地域の感染状況に注意(HPなどで確認する)
  ・出先で接触した人などをメモしておく(発症したときの為に)
 ②日常生活での基本的生活様式
  ・まめに手洗い・手指消毒
  ・咳エチケット
  ・こまめな換気
  ・身体的距離の確保
  ・3密回避(密集・密接・密閉)
  ・毎朝の検温(健康チェック)
  ・発熱、風邪症状のあるとき、無理せず自宅療養
  ・買い物は、最少人数、短時間で済ませる
  ・できる限り通販・オンラインなどを利用する
  ・公共交通機関を利用の際は、混んでいる時間帯を避ける
  ・できる限り徒歩・自転車を利用
  ・食事は、テイクアウト・出前を利用
  ・対面ではなく、横並びで座る
  ・グラスの回しのみは避ける
  ・冠婚葬祭は、多人数を避ける
  ・風邪などの症状があるときは参加しない
 ③働き方の新スタイル
  ・テレワークや時間差勤務
  ・Web会議システムの利用   など

 「新しい生活様式」実践例をあげてみるとかなり沢山ありますね・・・・
早く新型コロナのワクチンが普及し、もとの生活に戻れるよう祈りつつ、感染予防をしていきたいと思います。
 皆様も、ご自愛くださいませ。

一般社団法人みらいわ
事務局 安部幸子

みらいわブログ 2020年6月号

みらいわブログ6月号

 皆様、コロナ禍で大変な時ではありますが、三密に気を付けて頑張りましょう。
 今回は、最近世間で注目を集めている妖怪の話をしようと思います。皆さんはアマビエをご存じでしょうか。長髪で嘴がある半魚人のような妖怪です。
 世間では、コロナ禍を沈めてくれるのではなんて話で盛り上がっているようですが、この妖怪について少し調べてみたので、お時間のある方は読んでみてください。
 少し話が飛びますが、古事記を読まれた方はご存じだと思いますが、山幸彦と海幸彦のお話からこのアマビエの話に続いていきます。
 山幸彦は猟師を海幸彦は漁師をしていました。ある日山幸彦は海幸彦にお互いの道具を交換しないかと持ち掛けました。海幸彦は3回断りましたが、結局道具を交換しました。そしてここで事件が起こりました。山幸彦は、海幸彦が大切にしていた釣り針をなくしてしまいました。海幸彦もなれない猟師のため獲物が全く捕れなかったので、慣れないことはするものではないから、道具をもとに戻すことにしようと言ったのですが、ここで、山幸彦は海幸彦の釣り針を無くしたことを告げました。すると海幸彦はものすごく怒って釣り針を探してくるように言いました。
 山幸彦は広い海で針を見つけることは不可能だと途方にくれていると海神が助けてくれました。海神は山幸彦を気に入って、自分の娘トヨタマヒメと結婚させました。
 ここで終わっていればハッピーエンドだったのですが、海神は、めちゃくちゃ山幸彦びいきになったため、海幸彦に呪いをかけました。という話です(かなり内容に脚色ありですが)。
 山幸彦も海幸彦も古事記に登場する神様です。そして日本では神様が落ちてしますと妖怪になるというのが昔からいわれています。河童ももともと水の神様だったとか。
 で、この海幸彦が呪いによって「幸せ」の文字が無くなり海彦となり妖怪の海彦坊主となり、これがカタカナ表記のときにアマビコとなりこの誤字表記がアマビエとなったという説があるそうです。
 そこで、アマビエの話ですが、弘化3年(1846年)肥後国に現われて「当年より6か年の間は諸国で豊作がつづく。しかし同時に疫病が流行するから、私の姿を書き写した絵を人々に早々に見せよ」と予言めいたことを告げ海に消えたそうです。
 ここで、すごく疑問に思うことは疫病を退散させるなんて一言も言ってないんですよね。
 ここからは私の憶測ですが、神様は人々の信仰を集めるとそのお力が強くなるそうです。
アマビエも人々に認知されることによって、海神にかけられた呪いを解く力を集めようとしているのではないかなと勝手に想像しています。
 信じるか信じないかはあなた次第です。すみません。これが言いたいために長いお話をダラダラと書いてしまいました。
 コロナ禍まだまだ予断を許さない状況ですが、皆さん頑張っていきましょう。

                   税理士  上村昌毅

みらいわブログ 2020年5月号

『遺言書を書いた話』

 私は、この4月8日に遺言書を書きました・・・
と言っても、まだ余命宣告を受けたわけではありません。
実は、ちょっとした手術を受けることになり(ちょっとしたと言っても、一応全身麻酔が必要な程度の)、年齢から考えても(今年で67歳になります)何が起こってもおかしくないので、「この際遺言書を書いておこう」と考えたのです。

 本来は、毎年1月1日に『今年の遺言書』を書くようにしています。しかし、今年に限って、可愛がっているベトナム人の夫婦が正月に泊まりに来まして、あちこち連れて行ったり、遅くまで話が盛り上がったりと、ゆっくり机に向かう時間のないまま、ずるずると時が過ぎていたのです。

 入院が決まってから、さあ遺言書を書かなくっちゃと言う段階で、本業である税理士事務所の仕事がムチャクチャ忙しくなったのです。確定申告期限間際に、大型の個人事業者から、急遽今年の確定申告をお願いしたいとの連絡があり、忙しい中に無理矢理それを詰め込んだので、3週間ほどは、ほぼ土日もないような状況が続き、一応完了したのが4月の7日。夜戻ってから、入院の準備をして、慌てて翌日入院となりました。

 と言うことで、入院してから翌日の手術までの間に、院内のコンビニで便せんとボールペンを購入し、検査の合間に遺言書を書くという、全く慌ただしい作業をして、何とか手術までに書き上げた遺言書を、付き添いの家内に託して、これも慌ただしく手術室へと向かうことになりました。

 この文を書いていると言うことは、幸いにも遺言書は当面役には立ちませんでしたが、昨年の正月に遺言書を書いた時とはずいぶん状況が変わってきていることを、改めて感じました。遺言書は自筆証書であっても、十分に効力はありますし、この7月からは法務局が遺言書を保管してくれる業務も始まります。
 みなさんも、時々、遺言書を見直してみてはどうでしょう?結構状況が変わっていることに驚きますよ。え?遺言書はまだ書いていない?それは絶対まずいですよ~

 税理士 半田 正樹

みらいわブログ 2020年3月号

みらいわブログ 2020年3月号

【財産を持っているひとが認知症になったら・・・】

私は日ごろ不動産の売買に関するお仕事をさせていただいております。その現場でお客さまから「え?自宅なのに売れないのですか???」と言われることが最近増えてきました。実はそうなのです。絶対に売れないということではないのですが、ご自身やご家族が思うタイミングでスムーズに売ることはできなくなります。財産を持っている人(不動産の所有者)が認知症などになり判断能力が低下している(もしくは判断できない)場合、その人の法律行為は認められないからです。(法律行為というとむずかしく聞こえると思いますが、要は「売ります」という意思表示は無効だということとです。) 一つの解決方法として後見制度を利用するという手段がありますが、手続きや費用の問題、裁判所がかかわってくることや時間の問題など、最善の方法とは言えない部分があります。
そこでご紹介したいのが「家族信託」です。家族信託をしておけば、財産を持っている人が認知症になっても自宅の売却をスムーズにおこなうことができます。

事例でご紹介いたします。
<ご相談内容>
●相談者:山田花子さん(78歳・女性)北九州市在住
●現 状:
・ご自宅でひとり暮らしをしている。(ご主人は約2年前に他界された)
・子どもさんはいらっしゃらない。
・法定相続人は、ご兄弟やご兄弟の子どもさんの複数人いらっしゃる。
・現在ある財産は、このご自宅が主で、現預金はあまりない。

●ご希望や叶えたいこと:
・可能なかぎり自宅で暮らしたい。
・ひとり暮らしに不安が出てきたら、どこか施設への入所を考える。
・入所する際そして入所してからの施設費用や生活費など、金銭面で親類に迷惑をかけたくない。
・入所する際に自宅を売却し、さまざまな費用に充てていきたい。
・しかし、その際に物事の判断能力が低下していて、自宅を売れない状況だと困る。

●課題や問題点など:
・手持ちの現金・預金が少ないため、施設に入所する際の費用が足りないであろう。
・もらっている年金も月13万円~14万円程度なので、施設に入所してからの施設費や生活費も不足する可能性が高い。
・費用捻出のために自宅を売却しようとした際の判断能力。
・自宅売却後、認知症などになった場合には預金口座が凍結される可能性が高い。

【対応手法の検討】
① 遺言書を書いておく⇒ そもそも遺言書は、亡くなられた後のための手法ですので、ご自宅の売却や費用の捻出には適さない。
② 成年後見制度を使う(任意後見制度もしくは法定後見制度)⇒ 先でも述べましたが、家庭裁判所が関わってくること、利用するための手続き、後見制度がはじまってからの費用の問題、スムーズな売却手続きとならず売却の好機を逃してしまう等あり、最善の方法とは言えない部分がある。

<家族信託を利用した場合>
家族信託は、ご自分が、任せたい人に財産の維持や管理、処分(売却)を任せることができます。元気なうちにおこなう契約です。財産すべてではなく任せたい財産だけ任せることができます。
ご自宅の売却は、任された人がスムーズにおこなうことができ、手続きをご自分の代わりにおこなってくれます。ご自宅の名義は任された人の名義に変わりますが、ご自宅を売却したお金は、ご自分のものですのでご安心ください。
その後、ご自宅を売却したお金は、任された人が、ご自分のために使ってもらうように決めておくことができます。そして、亡くなられた際に、もし残っているお金があった場合、あげたい人にあげることができますので、遺言書と同じような機能もあります。

家族信託をしておけば、上記のイメージ図のような流れとなります。財産の管理や処分(売却)を任された甥っ子さんが、スムーズにご自宅を売却することができます。今後の費用の問題、手続きの問題、時間の問題をクリアできると思います。
 
私たち『一般社団法人みらいわ』には、この家族信託をコーディネートする担当(お客様からのご相談やお悩みをお聞きし、解決策を考える担当)と、このコーディネートをもとに契約書として形にする家族信託専門士の両方が在籍しておりますので、ぜひ私たちにご相談ください。

加来不動産株式会社
家族信託コーディネーター 井料 隆彦

みらいわブログ 2020年2月号

2020年2月になりました!
こんにちは、今回のブログ担当はわたくし税理士の兼田円です。
消費税税率が改正されはや4ヶ月が過ぎましたが、なかなか会計処理になれない方もいらっしゃる様子。それもそのはず、レシートの記載方法が数パターンあるからです。加えて税込経理の場合と、税抜経理の場合で、レシートに記載された金額を足し算するのか引き算するのか異なりますし、そもそも古いレジでいまだに改正対応していないレシートもあるようです。単純にデータ処理の手数が増え、年末年始の繁忙期も加え会計処理が遅れがちなクライアント様も…。
税務申告の期限は待った無しなので、私もお手伝いしつつ、なんとか対応していただくしかありません。

改正といえば、この2020年度から所得税の控除について大きな改正が適用されます。
簡潔にポイントを上げますと、
①基礎控除38万円が48万円へ引き上げ(所得制限あり)
②給与所得控除が10万円引き下げられ、逆に上限が220万円から195万へ引き下げ(諸条件あり)
うーんこれだけではよくわかりませんね。
実際に影響を受けそうな方を3パターンほどご紹介します。
(1)給与所得者で年収が850万円以下の方
①の減税と②の増税の両方が関係するため、実質的にほぼ影響なし
(2)給与所得者で年収が850万円超の方
給与所得控除の上限が引き下げられたため、実質増税で手取り額が減ります
(3)個人事業主(フリーランス含む)
①のみ影響を受けるため、基本的には減税となります。ただし青色申告控除65万円の要件が厳しくなるので変化なしとなる方も。
・・・上記の他にも様々な影響が予想されます。このように、所得税の計算構造が複雑になるのです。質問を受けてもなかなか一言で説明し辛く、「税負担が増えるか減るかは、それぞれの方のケースによります」としかお答えできません。
原則的には、高所得者により多い税負担を求める改正であり、応能負担という観点からは効果の高いものになります。が、私は、個人的に『税は簡素でなければならない』と思っています。国民の生活に大きく関わるものであり誰もがその内容をよく理解した上で納税するべきだと思うからです。しかし公平性を追求すれば、税はどうしても複雑になります。ジレンマです。

毎年改正される租税特別措置法や政策実現のために次々と創設される税制にはとても頭を悩まされますが、実務家としてしっかり検討・対応していかなければと思います。

税理士 兼田円

みらいわブログ 2020年1月号

新年のご挨拶

 皆様、明けましておめでとうございます。
 令和になり初の新年を迎えました。今年は夏に東京オリンピックが開催されますね。
日本選手団の活躍を期待して、テレビの前で応援したいと思います。
昨年は、ラグビー・ワールドカップが開催され、日本中が盛り上がりました。海外の一流選手達のプレーに魅了されたことも確かですが、その原動力となったのは日本代表チームの素晴らしい活躍でした。「ONE TEAM(ワンチーム)」という言葉が昨年の流行語大賞に選ばれたのも、多くの方が納得されたのではと思います。
個人的にも、ベスト8入りが掛かった10月13日の横浜で、日本代表がスコットランド代表に勝利した瞬間に立ち会えたのは幸運でした。その時は歴史の証人になれたような興奮と感動をおぼえました。

さて、私たち『一般社団法人みらいわ』は、平成26年2月に誕生し、6年目を迎えようとしています。「資産にまつわる様々な悩み事を、気軽にしかも問題が起きる前に解決するお手伝いができる組織」を作ることを目標に、これまで活動を続けてまいりました。今年もお客様の様々なご相談にお応えできるよう、ネズミのように小回りがきく、機動的でしなやかな身のこなしを心掛けてまいります。

 再びラグビーの話(しかも伝聞話)で恐縮ですが、日本代表チームには海外出身選手が約半数いました。日本で生まれ育った選手同士は日本語を使いますが、日本人同士では「あうんの呼吸」のように言葉にしなくても分かり合えるだろうと省略する部分があります。当然ながら、海外出身選手に「あうんの呼吸」は伝わりません。細部にわたり言葉を使って具体的かつ厳密に意思疎通を図ってきたそうです。結果として、日本出身選手の意思疎通も精緻さが増し、プレーの精度が高まりました。

「みらいわ」は専門資格者が集結したチームですが、各メンバーは異なる専門分野の「言葉」を話します。そこでチームとしては、資産対策に関する共通テーマの他、各人の専門分野についても研修会等を通じて「言葉」を理解し、知識や考え方の意思疎通を図っています。これにより、専門性が横断的な案件への対応も強化され、今後はさらにチーム力を高めてまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人みらいわ  沖永 裕章

みらいわブログ 2019年12月号

「所有者不明土地」ってなに?

 皆さんは「所有者不明土地」って言葉を聞いたことありますか?

 令和元年6月1日、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が施行されました。
 所有者不明なんて土地があるの? 不動産の登記制度はどうなってんの? 司法書士は何やってんの? なんて思われる方も多いかもしれません。
 私たち司法書士の力不足な面もあるのかもしれませんが、実は不動産登記(その中でも特に権利に関する登記)というのは、実は登記してもしなくてもいいんです。不動産登記(権利に関する登記)は「権利」であって「義務」ではないんですね。ですので、相続が発生しても何もしないで放っておく方々もいるんです。(※なお、会社や法人の登記は義務です。登記を懈怠すると過料になることがありますのでご注意ください!!)
 ちなみに、売買で取得した不動産を登記しないで放っておく人はいません。万が一放っておいて売主さんが他の人に二重売買してその買主さんが何も知らずに先に登記してしまったら、たとえ先に買っていたとしても登記した人には勝てないからです。
 でも、相続で取得した不動産を自分の被相続人(又はその直系尊属)の名義のままにしておいても、二重売買みたいなことをされる心配はありません。

 そして、そういった亡くなった方の名義のままで持ち主が不明の土地が、2016年の時点で日本全体で410万ヘクタールあるそうです。この広さって既に九州全体の面積より広いんです(汗) 今後何も対策しなければどんどん増えるとのことで、2040年には北海道の面積(約780万ヘクタール)に匹敵するとの見方もあります。
 そして、このような土地があると様々な問題が起こります。震災の復興事業や将来の災害対策として堤防や土地の補強等の公共事業をしようとしても、対象地の中に所有者不明土地があると思うように工事が進められないといったケースも出てきます。

 そこで、冒頭のような法律を作って、法務局の権限で土地を調査し、相続人を探したりすることができるようになりました。そして見つかった相続人には通知を発送し、相続登記を促していく予定です。我が福岡県でも、この年末年始には前述の通知が相続人あてに送られる予定です。(※この法律に該当する土地は福岡県全域で相当の数があり、毎年一部の地域ごとにこの作業をしているため、該当するケースでも今年通知が来ない方もいます。)
 また、今後の法改正によって、相続登記の義務化や罰則等も検討されているようです。

 このような通知を受け取ったけど一体どうしたら良いかわからないという方、まだ相続登記をしていなくて、そもそもどうしたらいいのか悩んでいるという方がいらっしゃれば、我々みらいわにぜひお気軽にご相談くださいね。

たかき司法書士事務所
 司法書士 高木 誠

みらいわブログ 2019年11月号

《 相続でもめる原因は【相続税】ではなく【分け方】です! 》

■相続でもめる原因はナニか? 
 結論から申しますと、「税金」ではなく、「分け方」でもめることがほとんどです。では、なぜ相続が起きてからもめてしまうのか。それはいくつか要因はありますが、現場で起きている事例をいくつかあげてみましょう。

①兄弟(家族)間での「コミュニケーションが日ごろから少ない」
②各相続人が「自分都合で」財産の分け方を頭のなかで考えている
(あるいは全く 考えていない)
③実際に財産を分けるときに「意見が合わない」(配偶者等がそこに介入する)
④税理士・司法書士から分け方について「納得のいく答え」がでない

■「分け方」を考える前にすること
 それは「分け方」について考えておくことが第一です。そのためにすべきことは、まずはざっくりでも良いので、相続税がどのくらいかかるのかの「現状把握」です。分からない方は、当社にご相談ください(税理士の先生は、相続に関して得手不得手が別れますのでご注意を)。
 つぎに、相続に詳しい専門家に自分のいまの考えを伝えてみること。あるいは、どう分けて良いか分からないときは、そのままの意見をぶつけてみることです。

■相続税が発生する方は要注意!
我々、「一般社団法人みらいわ」が「もめない相続」を実現させるために行っていることは、もちろん「現状把握」のお手伝いですが、その先にはお持ちの財産を【3つの評価(相続税路線価・時価評価・収益評価)】【4つに分ける(守る財産・備える財産・運用する財産・処分する財産)】ことを行い、財産を見える化することで(下図、参照)。この考え方は「もめない相続」にとても重要なことですが、残念ながら多くは知られていません。

■「だからこう分けた」が必要
 ほとんどの相続に不動産がからんできます。だからなかなか平等に分けることがむずかしい。それ故に【3つの評価(相続税路線価・時価評価・収益評価)】を【4つに分ける(守る財産・備える財産・運用する財産・処分する財産)】ことを行い、さらに「だからこう分けた」という想いや理由があれば「円満な相続」が実現できるはずです。

■まとめ 
 相続税の節対策は、最後です。と言いますのも、節税対策がうまくいっても、相続計画(分け方)がうまくいかないと結局もめます。
 ですからどうか「節税」という言葉に乗せられないで下さい。世のなかには必要のない「節税対策」が多いと感じています。


加来不動産株式会社
代表取締役 加来寛