定年後の再雇用について
みなさんこんにちは。弁護士の三山です。
今回は,6月1日に最高裁判所が出した判例を,みらいわブログ流にざっくりと確認したいと思います。
1 あらすじ
訴えたのは,定年後,有期契約で再雇用されたトラック運転手の方です。
この方は,「定年前との賃金格差がおかしい。正社員に支給されている各種手当が自分に支給されないのもおかしい。」として,会社を訴えました。
2 裁判所の判断
裁判所は,この問題は,労働契約法20条の問題であると指摘しました。
労働契約法20条は,以下の通りです。
ざっくりいうと,
ただし,「不合理な格差」はNG。
ということが書かれています。
そして,裁判所は,定年後再雇用の賃金が退職前より低くなってしまったとしても,それ自体は構わないとしました。
その上で,賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきとしました。
具体的には,正社員に基本給+職能給,有期社員に基本給+歩合給という区別をつけていることについて,本件ではOKとしました。
また,「住居手当」・「家族手当」に格差をつけることはOK,「精勤手当(=皆勤手当)」に格差をつけることはNGと判断しました。
この手当の種類による結論の違いは,これもざっくりいうと以下の理由によるものです。
住居手当・家族手当
正社員は幅広い世代が多く,生活費補助に理由がある。
定年後の再雇用社員は,老齢厚生年金支給が予定されており,支給開始前には会社からの調整金が支給されることになっている。
↓
区別をつけてもよい
精勤手当
皆勤を促す必要があることは,正社員であっても定年後の再雇用社員であっても変わりはないはず。
↓
区別は不合理
3 まとめ
裁判所の判断は,いずれも事例判断です。
あくまで,「その会社」の「その制度」についての判断であって,「住居手当の格差は一律OK。皆勤手当の格差は一律NG」としたものではありません。
重要なのは,賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきという部分です。
定年後の再雇用の現状・実態を踏まえつつ,「高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与する」ためという高齢者雇用安定法の趣旨を実現するため,あるべき再雇用社員に対する処遇を考える必要があると言えるでしょう。
弁護士 三山 直之