みらいわブログ 2024年9月号

「『メッセージノート』が出来ました」

「終活」という考え方が広く知られるようになりました。「エンディングノート」という言葉をご存じの方も多いでしょう。エンディングノートとは一般的に、自分自身やご家族のために、終末期の医療や介護、葬儀などの希望を記し意思表示を記録するノートを意味します。加えて、相続についての情報、つまり遺産や生命保険の内容、ご家族に受け継いでもらいたい財産や管理方法、残されたペットの委託先などエンディングノートの役割は徐々に増えてきました。

さて、わたしたちみらいわは、設立当初から皆様の「相続」にまつわる様々な問題を解決するお手伝いをしてきました。ご相談者様の個別事情に対して専門家集団のチームワークを活かし、遺言書の作成や、税金のシミュレーション・申告、不動産経営のコンサルティングなど様々な事案に向き合ってまいりました。その中で、「エンディングノート」という言葉をしばしば耳にするようになり、その重要性や必要性、作成するメリットが非常に大きいことを知ったのです。

みらいわが考えるエンディングノートの大きな役割は、ご自分から大切な人たちへの「メッセージ」です。終活という概念よりさらに広く「今の自分の想い」として、ご家族やこれからお世話になる方など大切な人たちへ伝えたいこと、情報を集めたノートです。ですから、このメッセージノートを作成するのに最適な時期は、老後ではなく「今」ということになります。

住所や血液型・家族構成などの基礎情報、資産のこと、デジタル情報、ペットや仕事のこと、健康や医療・介護のこと、葬儀や供養のこと、そして相続のこと。メッセージノートは市販されているエンディングノートに比べてかなり大きなボリュームになりました。もちろん全ての項目を完璧に記入する必要はありません。書く人にあわせて、自由に組み合わせができます。また、このメッセージノートには情報だけではなく、「想い」を書き添えられるようにしました。このノートを受け取り読む人にとっても大切なノートになることと思います。

メッセージノートを作成する一番のハードルは「動機」です。何かきっかけが無いと、よし!書こう!とはなかなかならないものです。みらいわでは、そのお手伝いとして、令和6年9月12日(木)、11月14日(木)に「メッセージノートが書けるようになるセミナー」を開催いたします。

たくさんの方のご参加をお待ちしています!

 

 

税理士 兼田円

みらいわブログ 2023年8月号

「ビッグモーター不正事件から感じること」

ビッグモーターが、預かったお客様の車両に故意に傷をつけるといった行為を行い、修理代金の保険金を水増し請求するという不正行為を行っていたことが発覚しました。総額は約38億円に上り、経営トップ会見で謝罪に追い込まれるという事態になりました。不正行為の大胆さにも耳を疑いましたが、これほど大規模な不正が世の中に知られずにいたことにも驚きます。

他の業界にも、不正とまでいかなくとも不自然な慣行というものが意外とあるのかもしれません。そんないびつな行為も日常的になれば疑問を抱くことが難しく、たまたまその場に居合わせた第三者の指摘で初めてその異常さに気付くということもあると思います。

もしかして身の回りにもないだろうか?とふと考えました。

すると私たち税理士は不正行為と全く縁がないどころか、毎年いくつかの税理士法違反事案が発生し、処分を受けていることを思い出しました。例えば、顧客の求めに応じて不正な経理処理を行なったり、税務申告を行うといったいくつかの事例が税理士会報に載っています。その中には不正の意識が薄いまま行ってしまったものもあるでしょう。

そういう不正を防ぐために、私たち税理士は税務署から実態調査等で監視を受け、毎年税理士法についての研修を必ず受講しなければなりません。

けれど今回のことでそれ以外にも大事にしなければいけないと感じたのは、お客様の声を大切にするということです。

ビッグモーターのお客様の中には自分の車の修理について、違和感を覚えた人も少なくなかったでしょう、その思いは修理の専門家だからとうやむやになってしまったのかもしれません。

私ども税理士のお客様に対しても、会計や税務のことで疑問に思われたことや、心配に感じたことを、今までそうしてきたからとか、法律でそう決まっているからと簡単に説明を終わらせず、お客様の視点で再検討する良い機会だと考えるようにしなければと、改めて感じました。

「みらいわ」は、みなさんが他の専門家では聞けないと感じているご質問やご相談を、心よりお待ちしております!!

 

 

兼田円税理士事務所

税理士 兼田 円

みらいわブログ 2022年7月号

「サブスク契約に気をつけて」

いつの間にかテレビで普通に使用されている言葉「サブスク(=サブスクリプション)」
一定期間に定額で商品やサービスを利用できることを意味します。

定額サービスというと、モトを取れないという先入観があったのですが、私も今では動画や音楽配信サービスなど、とても手軽な金額で楽しんでいます。けれど、2つの点で注意しないといけないと感じたことがあります。

ひとつ目は、「無料のコンテンツに注意する」です。
これは失敗話なのですが、アマゾンのプライムビデオという定額サービスを利用している際のこと。
メニューの中には無料で見られるものと、有料で支払手続きをしないと見られないものがあります。それは十分注意したうえで、有料番組もたまに利用しつつきちんと管理できているつもりでした。
ところがある日普段使っていないカードの明細をふと見ると、身に覚えの無いアマゾンからの請求が・・・5つほどの明細はすべて「○○チャンネル利用料」です。この時初めて、しまった!と思いました。無料だと思っていたチャンネルは一定期間の後有料になることを知らず、もしくは良く確認せずに軽い気持ちで利用していたのです。中には1年間支払いを続けたチャンネルもありました。ほんの10分ほど内容を確認するために登録したスポーツ番組でした。なんともったいない・・・これに懲りて、無料のチャンネルでも登録は用心して、たとえ文字が小さくても規約や説明はきちんと読むことを家族と話し合いました。

ふたつ目は、「利用している人が亡くなった際、家族はサービスを止められるか」です。
結論から言うと、利用登録した際のIDとパスワードが無いと、家族といえど簡単にサービスを退会できないようです。また、亡くなった後の利用料を払い戻してくれるかというと、その請求もハードルが高いそうです。これはサブスクの種類や利用料の決済手段により難易度がまちまちなので、具体的な手順をここで説明するのは控えますが、調べているうちにうんざりするような内容でした。
原則として退会しなければ契約期間が終了するまで否応無く支払義務が発生します。自分がどんなサービスを利用しているか、家族は知っていますか?漏れなく完璧に伝えている人はなかなかいないと思います。こちらも家族で報告しあうことが必要だと感じます。

簡単で安価で手軽なサブスク。
安価と思ったら手痛い出費になった、とならないように気をつけて楽しみましょう。

兼田円税理士事務所
税理士 兼田 円

みらいわブログ 2021年9月号

こんにちは、税理士の兼田です。
仕事以外でお知り合いになった方に、職業が税理士であることを伝えると多少なりとも驚かれるのですが、世の中の「税理士」のイメージはどんな風なのでしょうか。
社長へ向かって「これは経費で落ちません」と啖呵を切るんでしょ、と言われた時には笑ってしまいました。きっとドラマの影響ですね。

また、「仕事と同じように家計もきちんと管理している」と思われているようです。
実際はどうなのでしょうか。私の場合、家計簿をつけることは実は3回挫折しています。医者の不養生、という諺もありますが、単なる面倒くさがりということと、実態がわかりすぎて嫌になる、という理由もあります。

今は、スマートフォンのアプリが優秀なので、簿記を全く知らなくても会計帳簿が作成できる時代です。ましてや家計簿など、その気になればちょいちょいと作成できます。
高校生になり、使うお金の額が急に増えた息子が「いつの間にか小遣いがなくなっている」と嘆いていたので、アプリを使うように進めました。
すると1月ほどたって「まだ1円もずれたことがない」と自慢げに報告してきました。肝心の内容については「何に使いすぎているのか、理解できた」ということですが、それを改善する策は?と尋ねると「なるべく親に買ってもらう」
子供の特権で特別収益のあてがあるようですが、上手くいくかは??

電子マネー決済の普及で、家計も信用取引の占める割合が大きくなり、現在の正味財産が把握しにくい世の中になりました。
一昔前お給料を現金で受け取っていた時代は「現金が残れば黒字」というわかりやすいものでしたが、現在は、通帳残高だけでは判断できません。インターネットでアクセスしないと先の支払予定がわからないのです。

現金決済メインで家計簿不要のアナログ生活を送るか、電子マネー決済でアプリを活用しつつ家計を管理するデジタル生活を送るか、選択を迫られている時代だと感じます。

兼田円税理士事務所
税理士 兼田 円

みらいわブログ 2020年2月号

2020年2月になりました!
こんにちは、今回のブログ担当はわたくし税理士の兼田円です。
消費税税率が改正されはや4ヶ月が過ぎましたが、なかなか会計処理になれない方もいらっしゃる様子。それもそのはず、レシートの記載方法が数パターンあるからです。加えて税込経理の場合と、税抜経理の場合で、レシートに記載された金額を足し算するのか引き算するのか異なりますし、そもそも古いレジでいまだに改正対応していないレシートもあるようです。単純にデータ処理の手数が増え、年末年始の繁忙期も加え会計処理が遅れがちなクライアント様も…。
税務申告の期限は待った無しなので、私もお手伝いしつつ、なんとか対応していただくしかありません。

改正といえば、この2020年度から所得税の控除について大きな改正が適用されます。
簡潔にポイントを上げますと、
①基礎控除38万円が48万円へ引き上げ(所得制限あり)
②給与所得控除が10万円引き下げられ、逆に上限が220万円から195万へ引き下げ(諸条件あり)
うーんこれだけではよくわかりませんね。
実際に影響を受けそうな方を3パターンほどご紹介します。
(1)給与所得者で年収が850万円以下の方
①の減税と②の増税の両方が関係するため、実質的にほぼ影響なし
(2)給与所得者で年収が850万円超の方
給与所得控除の上限が引き下げられたため、実質増税で手取り額が減ります
(3)個人事業主(フリーランス含む)
①のみ影響を受けるため、基本的には減税となります。ただし青色申告控除65万円の要件が厳しくなるので変化なしとなる方も。
・・・上記の他にも様々な影響が予想されます。このように、所得税の計算構造が複雑になるのです。質問を受けてもなかなか一言で説明し辛く、「税負担が増えるか減るかは、それぞれの方のケースによります」としかお答えできません。
原則的には、高所得者により多い税負担を求める改正であり、応能負担という観点からは効果の高いものになります。が、私は、個人的に『税は簡素でなければならない』と思っています。国民の生活に大きく関わるものであり誰もがその内容をよく理解した上で納税するべきだと思うからです。しかし公平性を追求すれば、税はどうしても複雑になります。ジレンマです。

毎年改正される租税特別措置法や政策実現のために次々と創設される税制にはとても頭を悩まされますが、実務家としてしっかり検討・対応していかなければと思います。

税理士 兼田円

みらいわブログ 2019年2月号

こんにちは、みらいわメンバー、税理士の兼田円です。
2019年2月は、私が当ブログの担当です、よろしくお願いいたします!

現天皇陛下が退位されることが決まってから、この冠言葉がひんぱんに使われるようになりました。
「平成最後の」限定商品のパッケージに使われるとやはり普段とは違うレア感があり、消費行動が活発になってしまいますね(私だけでしょうか?)。4月へ向けてさらに商品が増えそうな勢いです。

さて約1月前になりますが、この「平成最後の」お正月、福岡地方は穏やかな天気に恵まれ、初詣日和となりました。 私は例年より少し足を伸ばし、家族で福岡市東区にある筥崎八幡宮へお参りへ行ったのですが、その時に印象に残ったこと2つを、今回のブログに書こうと思います。

1つ目。
筥崎八幡宮の本殿を見上げるとすぐに目に入ってくる漢字4文字に、ドキっとしました。

「敵國降伏」
神社すぐ近くの空を福岡空港へ離発着する飛行機が横切っていきます。ついイメージ的に明治〜昭和の戦争を連想してしまいました。福岡市はいろんな国からの観光客や留学生が来ているはず…うーんこれは穏やかでない…??
しかしよくよく調べてみると、これは元寇・蒙古が襲来したおりに神風が吹いて九州への上陸を阻んだことから、日本を敵国から守る厄除勝利の神様をまつる、という意味の言葉でした。
なので、いわゆる炎上案件ではありません!内心ホッとしました。
いま外交関係がとてもナイーブで、ひとつの判断が政治だけでなく経済に大きな影響が与えかねないバランスに日本は立たされています。私は今回のような安直な連想をせず、広い視野と豊かな想像力で世界の中に立つ日本、を考えないといけませんでしたね。

2つ目。
参道には左右にたくさんの出店があり、あれこれ迷って、一番美味しそうだったたこ焼きを1パック買った時のこと。600円支払う時に、聞かれたのです。
「食べて行きますか、お持ち帰りですか」
みるとテント内にテーブルと椅子を並べた飲食スペースがありました。空いていたので、食べて行きます、と答えると、パックではなく紙皿にたこ焼きをのせて、お箸を2膳添えてくれました。そのあつあつのたこ焼きを頬張って考えたこと。タコが大きくてすごく美味しい!ではなくて(それもありましたが)、今年10月からの消費税改正になったら、このお店は売上をきちんと8%と10%に分けて把握しないといけないんだな、ということです。
なぜなら、改正された消費税法では、持って帰る食品は軽減税率8%で課税され、飲食のための施設で提供されたものは原則の10%で課税されるからです。
イートインコーナーのあるコンビニエンスストアやスーパーも同様の考え方をします。

アルバイトらしき若い女の子は、どんどんたこ焼きを売り捌き、受け取ったお金を無造作にカゴにぽいぽい投げ入れていました。手許にレジもなければ帳面もありません。
来年から消費税の申告…正確にできるのかな?
簡易計算などの便宜的な経過措置は今の所講じられる予定はありません。
本当に軽減税率はデメリットの方が多い制度になりそうだな、と感じました。

そんな不穏な気持ちを抱いた筥崎八幡宮でひいたおみくじは小吉でした。良いことも試練も、ほどほどに訪れる1年になりそうです。

税理士 兼田円

みらいわブログ 2017年12月号

【女性の創業支援の悩み】

 「みらいわ」が所在する北九州市では、「女性創業サポート事業」として女性の起業を応援しています。
 時々私にも講師依頼のお声がかかり、お金に関するお話をさせていただいています。

 今から起業を考えている人、もしくは始めたばかりでお金との付き合い方がわからない人を対象にしているのですが、来場者はいつも満員!そしてセミナー中もお顔が真剣!
 女性のパワーを感じますね、逆に私のほうが刺激をもらって帰ってきます。

 何度かセミナーで質疑応答をしているうちに、女性が起業について一番多い悩みがわかりました。
 それは「お金のことを誰に相談してよいかわからない」です。
 起業するためにいくら必要なのか、事業を始めたら帳簿をどうすればよいか、申告をしないといけないのか、主人の扶養から両方(所得税・社会保険)外れてしまうのか・・・
 こういった悩みそのものはもちろん、相談する場所を知らないことに困っているとのこと。
 北九州市に税理士は数多く存在しているのですが、どう接触してよいかわからない、HPからのお問い合わせは敷居が高いとみなさん仰ってました。
 調べやすい方法としては、市政だよりなどで無料相談会のお知らせをチェックする、市の相談機関を探して予約をする、確定申告期に会場に派遣されている税理士に相談する、税理士会に問い合わせをする、といったところでしょうか。。
 あとは税理会員名簿を見て、電話番号に直接アタックを・・・これは難しいですね。

 みらいわセミナーでも然りですが、来場してお会いできた方とは何かのご縁があるということ。
 その場だけでなく、今後も良いお付き合いをさせてもらえたらと毎度思います。

税理士 兼田 円

みらいわブログ 2016年11月号

「配偶者控除の廃止」~103万円の壁の正体~

 初めまして、「みらいわ」メンバー税理士の兼田円です。
 さて、みらいわブログの記念すべき担当第1回目。
 今回採り上げたいテーマは、最近ホットなこちらです。
「配偶者控除の廃止」
 そもそも配偶者控除とは何か?を、「パート主婦の目線」からお話します。
「パート主婦の【給与収入】が年間103万円以下であれば【所得税法上】でご主人の控除対象配偶者となり、【ご主人の所得税】を計算する際に「配偶者控除38万円」が受けられる、という制度」
 そんなこととっくに知ってるよ~、と仰るなかれ。
上記の1文に、特に気をつけるべき項目が3つあります。【 】部分です。

【給与収入】について、お勤め先から支給される給与をいいます。例えば、「料理教室やネイルサロンを経営して得た収入」「ブログのアフィリエイト収入」等はこれに該当しないので注意が必要です。

【所得税法上】について、この年収103万円の壁は、あくまで「所得税法の控除対象配偶者に該当するかしないか」というボーダーラインです。言い換えると、年収103万円を超えても、社会保険上の「被扶養者」には該当することがあります。
 けれど実際には、ご主人の会社の福利厚生制度や健康保険組合によっては「所得税法上の配偶者控除の壁=社会保険の被扶養者の壁=103万円」と規定している会社もあるようです。
 さらに最近ショッキングな話を聞きました。
 「一昨年の私(パート主婦)の年収が、ボーナスを足したら103万円超えていたの。だから主人が申告して税金を納めたのだけど」
 はいはい、よく聞くお話ですね。
 「主人が会社でその話をしたら、一昨年の家族手当支給分24万円を一括返済してくれって経理から言われて」
 思わずエーっと言ってしまいました。
 税金や社会保険だけの話かと思っていたら、まさか家族手当ての取り消しになるなんて・・・と肩を落としていました。本来所得税上だけの壁である103万を、家族手当とも連動させている会社は少なくないようです。

【ご主人の所得税】についてよくある誤解、年収が103万円を1円でも超えたら、即控除が無くなり税金がどっと増える?
 いいえ、「配偶者特別控除」というクッション機能がありますので、103万円の壁を多少越えたとしても、所得税は大きな影響は受けないのです。この配偶者特別控除という制度のおかげで、年収141万円まではジワジワと税額が増えていきます。どこまで増えるかというと、計算上最低52,000円です(所得税+市県民税)。ただし、ご主人が高所得者であれば、増える税金は上記よりさらに多額になります。

 さて現状の結論として、パート収入の壁は、配偶者控除よりも「社会保険の被扶養者」や「家族手当」の壁を意識したほうが家計への影響を少なくできます。
 とはいえ。今政府が検討している案、「配偶者控除を廃止」となると、上記クッション機能も同時に廃止となる可能性が高く、家計のダメージはそれなりに大きなものになるでしょう。今後、私たち納税者はこの議論の経過をしっかり見ていく必要がありそうです。

 税理士 兼田円

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