みらいわブログ 2024年8月号

「猛暑」の思い出

こんにちは。不動産鑑定士の沖永です。

梅雨が明け、連日危険な猛暑が続いています。このところ最高気温は、当然のように36℃、37℃を記録しています。7月最終週には全国で40℃超えも複数現れるそうです。どうか皆さま、熱中症にご注意のうえお過ごしください。

私にとっての「猛暑」は小学3年生頃の記憶が強いのですが、それでも当時は32℃~33℃が「記録的な暑さ」だったと記憶しています。今から40年以上も前のことですが、記憶に残っているのは、長引く猛暑で渇水が続き数ヶ月も夜間の水道が「断水」となり、不便な生活を強いられたからでしょう。連日「節水」がうたわれ、「節水」シールが配られ、日中の水道利用は最低限にと厳命され、毎晩8時頃になると大型のポリバケツに水道水を溜めていた記憶があります。

当時は北九州市八幡西区の戸建住宅団地に住んでいましたが、自宅から2分ほど歩くと隣接する中間市の戸建住宅団地に入ります。そこでは庭木の散水や洗車で家々から気前よく水道水が放出され、市境の道一本隔ててこんなに違うものかと不思議な気持ちになりました。父親は、「中間市は遠賀川があるから水に困らん。北九州市は中間市と合併すればいい」と言っていました。

結局、中間市との合併は実現しませんでしたが、今では北九州市の水源は市外を含め10か所確保されています。特に遠方では宮若市(力丸ダム)や大分県(耶馬渓ダム)にも水源を持つなど、水事情は良好といえそうです。それどころか北九州市は市外の自治体に水道供給を行っています。宗像市・福津市・古賀市・新宮町には合計で1日最大2万㎥の水道供給を、また岡垣町、香春町にも供給しているそうです(以上、「北九州市上下水道局」ホームページより)。

 

先日の新聞に、福岡都市圏の人口増加が著しいとの記事がありました。特に福津市と新宮町の人口はこの10年間で15%以上増え、宗像市と古賀市も数%増加し、福岡市のベッドタウンとしての位置付けはますます強くなっています。

一方、北九州市の人口はこの10年間で6%以上減少し、全国の市町村でワースト2の減少数だそうです。人口動態のみに着目すると北九州市のネガティブな面が目に留まりますが、生活インフラとして水源確保は不可欠ですので、福岡都市圏では今後も人口増加にともなう水道需要の増大が予測されます。さらに温暖化による気温上昇が続くと渇水による水不足の恐れが懸念されます。そうなりますと北九州市の水源は将来的に大きな利点になるのではと思われます。

以 上

不動産鑑定士 沖永 裕章

 

 

みらいわブログ 2022年6月号

「マンションが売れているそうですが…」

こんにちは。
先日、テレビのワイドショーを観ていたら、東京の中古マンション価格が高騰しているとの話題で盛り上っていました。細かい数字は忘れましたが(笑)、ある地区の中古マンションがこの10年程で2倍~3倍?になったそうで、コメンテーターが興奮気味に語っていました。
分譲マンションの価格は、建築費の高騰や地価の上昇で新築物件の販売価格が高止まりの傾向にあります。購入者にとっても依然として超低金利が続いており、マイホーム取得のための融資条件も比較的緩く高値でも購入しやすい環境にあると言われています。その一方で、新築物件の高騰による影響から、予算面で新築購入を断念した需要者層が中古物件に流れ、中古市場が過熱するという現象が起きています。なお、東京ほどではありませんが、この傾向は福岡県内の都市部でも見受けられます。
さて、マンションをお持ちの方には良さそうに聞こえますが、果たしてそうでしょうか?
マイホームではなく、投資物件をお持ちの方にとっては、メリットが大きいかもしれません(一説では、昨年秋より中古マンションの在庫が増えており、価格は下降局面に入ったと指摘する専門家もおられます)。一方で、同条件の物件に住み替えを検討している方にとっては、「高く売って」「高く買う」訳ですから、あまり意味はなさそうです。しかも不動産業者への仲介手数料や不動産売買に関する各種税金もかかります。ただし、家族構成の変化で現在の間取りが広すぎて、コンパクトな物件に住み替える場合などでしたら、良いタイミングかもしれません。
ところで、マンションを「終の棲家に」と考えるのは慎重さが求められます。新築後40年ほど経つと「建替え」を意識せざるを得なくなりますが、現実問題としてマンション内の所有者間の合意形成と建替え費用の捻出が困難なため断念することが多いと伺います。この点も、経年劣化や破損に対して修繕工事が適切に行われば建替えまでの期間を引き延ばすことは可能ですが、マンションオーナー(区分所有者)で構成する管理組合に十分な修繕積立金がプールされていることが前提です。一般論として分譲マンション業者は売りやすくするために当初の修繕積立金を低く設定する傾向にあり、通常はその後も「現状維持」が続きます。そして新築後10年近く経つと長期修繕計画に基づく第1回目の大規模修繕工事が検討され始めます。この時点でようやく「積立金不足」という現実に直面します。
 先ほどの「住み替え」の話に戻ると、買替え時の金銭的な損得だけでなく、買替えたマンション全体における過去の修繕履歴や修繕積立金の積立状況など、今後の支出面もあわせて把握しておくことが肝要かと思われます。

不動産鑑定士 沖永 裕章

みらいわブログ 2021年8月号

「3年後の未来は、明るい?」

こんにちは。東京オリンピックでは日本選手の活躍が目立ちましたが、その一方で感染拡大による再度の自粛要請など閉塞感が抜けきれず、今回は柔らかい話題にしたいと思います。

東京オリンピックの閉会式を、最後の1時間ほどテレビで観ました。
閉会式の内容は特に述べませんが、部分的に見どころはあったと思います。
特に、東京の国立競技場と次回開催のパリとの温度差を強く感じました。
今後の感染状況は予測できませんが、パリの現地映像を観ると妙に楽観的な気分になり、3年後のパリでは通常のオリンピック観戦ができそうな期待を抱きました。
個人的には、パリ(及び郊外)の著名な観光施設を競技会場にするというプランに魅力を感じました。オルセー美術館でフェンシング、ヴェルサイユ宮殿で馬術、エッフェル塔の下でビーチバレーなど、競技自体に興味がなくても、ついテレビ観戦したくなります。
それにしても、仮に日本で通常開催が可能だったとして、ここまで柔軟な発想の運営ができたかどうか。日本では普段目にする機会の少ない競技でこのような工夫があれば、オリンピックを契機にいわゆるマイナースポーツに脚光を当てられる絶好の機会となりそうです。ど素人発想ですが、東京都庭園美術館の敷地内でのフェンシングは魅力的です。
「おもてなし」も大切ですが、競技を知るきっかけを提供しつつ、やんわりと観光資源を紹介する視点があっても良いのではと思いました。

日本では2019年にラグビー・ワールドカップが開催され、日本中が熱狂に包まれながら、翌年のコロナ禍でこれほどの断絶を生じるとは誰も想像できなかったと思います。
偶然かどうか分かりませんが、次回(2023年)のラグビー・ワールドカップの開催地はフランスです。その翌年にパリオリンピックが開催される予定です。

今は明るい未来を信じて…
皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

2021年8月10日 不動産鑑定士 沖永 裕章

みらいわブログ 2020年1月号

新年のご挨拶

 皆様、明けましておめでとうございます。
 令和になり初の新年を迎えました。今年は夏に東京オリンピックが開催されますね。
日本選手団の活躍を期待して、テレビの前で応援したいと思います。
昨年は、ラグビー・ワールドカップが開催され、日本中が盛り上がりました。海外の一流選手達のプレーに魅了されたことも確かですが、その原動力となったのは日本代表チームの素晴らしい活躍でした。「ONE TEAM(ワンチーム)」という言葉が昨年の流行語大賞に選ばれたのも、多くの方が納得されたのではと思います。
個人的にも、ベスト8入りが掛かった10月13日の横浜で、日本代表がスコットランド代表に勝利した瞬間に立ち会えたのは幸運でした。その時は歴史の証人になれたような興奮と感動をおぼえました。

さて、私たち『一般社団法人みらいわ』は、平成26年2月に誕生し、6年目を迎えようとしています。「資産にまつわる様々な悩み事を、気軽にしかも問題が起きる前に解決するお手伝いができる組織」を作ることを目標に、これまで活動を続けてまいりました。今年もお客様の様々なご相談にお応えできるよう、ネズミのように小回りがきく、機動的でしなやかな身のこなしを心掛けてまいります。

 再びラグビーの話(しかも伝聞話)で恐縮ですが、日本代表チームには海外出身選手が約半数いました。日本で生まれ育った選手同士は日本語を使いますが、日本人同士では「あうんの呼吸」のように言葉にしなくても分かり合えるだろうと省略する部分があります。当然ながら、海外出身選手に「あうんの呼吸」は伝わりません。細部にわたり言葉を使って具体的かつ厳密に意思疎通を図ってきたそうです。結果として、日本出身選手の意思疎通も精緻さが増し、プレーの精度が高まりました。

「みらいわ」は専門資格者が集結したチームですが、各メンバーは異なる専門分野の「言葉」を話します。そこでチームとしては、資産対策に関する共通テーマの他、各人の専門分野についても研修会等を通じて「言葉」を理解し、知識や考え方の意思疎通を図っています。これにより、専門性が横断的な案件への対応も強化され、今後はさらにチーム力を高めてまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人みらいわ  沖永 裕章

みらいわブログ 2019年1月号

新年のご挨拶

 皆様、明けましておめでとうございます。
 今年は平成も終わり、新しい時代を迎えます。個人的には、日本で初めて開催されるラグビーのワールドカップが楽しみです。日本代表選手の活躍を期待して、応援したいと思います。
さて、私たち『一般社団法人みらいわ』は、平成26年2月に誕生し、5年目を迎えようとしています。「資産にまつわる様々な悩み事を、気軽にしかも問題が起きる前に解決するお手伝いができる組織」を作ることを目標に、これまで活動を続けてまいりました。今年は干支にちなんで猪突猛進といきたいところですが、お客様の様々なご相談にお応えできるよう、しなやかな身のこなしも心掛けてまいります。
一昨年に出版された『未来の年表』※という新書は、人口減少社会の日本でこれから起きることが予測されています。読んでみると、悲観的な内容ばかりです。例えば、「2020年:女性の2人に1人が50歳以上に」「2024年:3人に1人が65歳以上の超高齢化大国へ」「2033年:全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる」といった見出しが躍ります。残念ながら、国の機関が推計した将来人口はかなり正確といわれ、本書はこの最新データに基づき書かれているそうです。あわせて著者による処方箋として、社会の仕組みや生き方を変えていくことが提案されていますが、あくまで国家レベルです。私たち『みらいわ』は、もっと身近な人びとに焦点をあてた活動を行っています。
『みらいわ』には、お客様の拠り所となる家族や組織などが次の世代に円満に繋がるよう、未来への橋渡しのサポートを目指した、私たちの思いが込められています。
昨年11月には社会保険労務士も加入し、ご相談いただける専門分野が広がりました。
今後も、私たち『みらいわ』をご活用頂く機会が増えることを切に願っています。
微力ではありますが、メンバー全員が更に力を合わせて精進いたします。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人みらいわ  沖永 裕章

【参考文献】
※『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』:河合雅司 著、講談社現代新書2431

みらいわブログ 2017年11月号

民泊事業がしやすくなるそうですが・・・

 数年前から民泊(みんぱく)という宿泊形態が注目され、ビジネスとしてもAirbnb(エアビーアンドビー)などのウェブサイトが登場し、メディアで盛んに取りあげられるようになりました。
 一般的に、民泊とは、旅行者などが対価を支払って一般の民家に宿泊することを意味するそうです。個人的には、大学生の頃にヨーロッパなどの旅行時に利用したことがあり、ホテルが少ない地域で安く泊まれて重宝したことを記憶しています。
 しかし、日本では宿泊業をビジネスとして行う場合、旅館業法の適用を受けるため営業許可が必要になります。このため、例えば、個人が自宅を一定期間民泊として合法的に利用することは、特区民泊などの例外を除いて、法規制の点でかなりハードルが高いと思われます。
 ところが、今年6月に住宅宿泊事業法(以下「民泊法」)が成立し、早ければ来年(平成30年)春ごろに施行される見通しです。同法施行により、民泊事業者は基本的に、知事への届出により年間180日を上限に事業を行うことが可能となります。このように民泊法の施行は、規制緩和の点から民泊ビジネスの利用者にとっては望ましいことであり、また地域の空家対策として有効との意見も聞かれます。その一方で問題点も指摘されます。
 具体的には、分譲マンションの住戸を民泊に利用する場合があげられます。分譲マンションの居住者は、一般的にマンションの居住環境や資産価値を重視して購入する方が多いと思われます。しかし、民泊実施によりマンション内に不特定多数の非居住者が出入りする可能性があり、騒音・ゴミ問題などのトラブル発生が懸念されます。そうならないようにマンションの所有者・居住者間で利用上のルールを定めた「管理規約」がありますが、ほとんどのマンションの管理規約は民泊の実施を想定して作られていないと思われます。
 そこで、民泊実施によるトラブルの防止のため、まずはマンション管理組合の総会等で民泊の可否について議論を行い、その結果を踏まえて、民泊を許容または禁止する旨を管理規約に明文化しておくことが望ましいと思われます。

 マンション管理規約の具体的な改正案については、国土交通省のリリースをご参照下さい。
 http://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000146.html

 不動産鑑定士 マンション管理士  沖永 裕章

みらいわブログ 2016年10月号

見つかりにくい、資産税の落とし穴

こんにちは、不動産鑑定士の沖永です。
このところ、基礎控除の減額などで相続税が脚光を浴びています。私のところにも相続財産となる土地や建物の評価について相談を頂く機会が増えています。
一方、土地や建物を所有していると毎年、固定資産税がかかりますが、こちらについて、スクラップブックをめくっていると興味深い新聞記事を見つけました。ちょっと古い情報で恐縮ですが、以下引用します。

特例適用漏れ本来の6倍に
横浜市では、アパートを経営する70代男性が3年前、20年間にわたり余計に固定資産税を納めていたことを知った。入居者用の駐車場にしているアパートの隣接地に、誤って本来の6倍の税金がかけられていた。
住宅用の土地は、固定資産税を計算する際の評価額が200㎡(1戸あたり)までは6分の1、それを超えた分は3分の1に下がる特例がある。このアパートの駐車場の土地も入居者のために使われており、本来なら特例の対象になる。だが、登記上はアパートと駐車場が別の土地のため、市は住宅用ではないと勘違いしていた。』
(平成27年10月5日 朝日新聞朝刊より)

上記は、土地の評価の問題というよりも、課税の特例適用に不備のある事例として紹介されています。ここでのポイントは土地の評価単位である画地(かくち)認定にあります。固定資産税では、原則として1筆の土地ごとに評価され課税されますが、複数の筆で一体として利用されている場合は複数筆をまとめて、一画地として評価の単位とします。
画地認定の考え方は、不動産鑑定士にとっては土地評価の前提を決める実に基本的な作業です。ただし、事例の場合は実地にアパートの駐車場として利用されていることを確認する必要があります。
上記の課税当局は、市の全筆の土地(おそらく数百万筆)を3年毎に評価する必要があります。市職員も最新の住宅地図や航空写真などで土地の状況を確認していると思われますが、全筆の土地に対する現地確認は現実的に無理があると言わざるを得ません。

記事はさらに続きます。

『男性はこのことを、新たに確定申告を依頼した税理士から教えられた。税理士によると、同じようなミスは各地で頻発しているが、土地の評価に精通した税理士が少なく、発覚するのは氷山の一角だという。
男性は市に税額の変更を求め、納め過ぎた税金の5年分として約250万円が還付された。』 
(平成27年10月5日 朝日新聞朝刊より)
記事によると、新たに担当した税理士さんが資産課税のしくみに精通していたため、課税ミスが発覚したものと推測されます。
個人的には「土地の評価に精通した税理士が少なく…」という税理士さんのコメントには納得感があります。門外漢の私が言うのも変ですが、税理士さんの業務は非常に専門性が強いとの印象があり、一人の税理士があらゆる税法・税制に精通するのは難しいだろうなあと。

「みらいわ」では、専門分野の異なる複数の税理士が所属しており、当然、資産税に明るい税理士も控えています。さらに、私のような不動産鑑定士や弁護士、司法書士など他の資格者との意見交換も自由ですので、資産の問題に対する横断的な対応も可能です。

以 上

平成28年9月28日 不動産鑑定士 沖永 裕章

【参考】平成27年10月5日 朝日新聞朝刊4面 より抜粋
特例適用漏れ本来の6倍に
横浜市では、アパートを経営する70代男性が3年前、20年間にわたり余計に固定資産税を納めていたことを知った。入居者用の駐車場にしているアパートの隣接地に、誤って本来の6倍の税金がかけられていた。
住宅用の土地は、固定資産税を計算する際の評価額が200㎡(1戸あたり)までは6分の1、それを超えた分は3分の1に下がる特例がある。このアパートの駐車場の土地も入居者のために使われており、本来なら特例の対象になる。だが、登記上はアパートと駐車場が別の土地のため、市は住宅用ではないと勘違いしていた。
男性はこのことを、新たに確定申告を依頼した税理士から教えられた。税理士によると、同じようなミスは各地で頻発しているが、土地の評価に精通した税理士が少なく、発覚するのは氷山の一角だという。
男性は市に税額の変更を求め、納め過ぎた税金の5年分として約250万円が還付された。
「自治体は税金の滞納は見逃さないのに、自らのミスには気づかない。納得できませんね」。男性はそう話す。

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